スレイヤーズEVOLUTION-R 第13話 補足感想

 最終回からはや1ヶ月近く。時間経ちすぎですが…スレイヤーズEVOLUTION-R13話の補足感想を書いてみます。なかなか纏まらなくて、すごい難産だった・・・。かなり長文なので、お時間がある時にでも是非。以下、ネタバレ。
 以前、「まとめる」と言いつつなかなか着手していなかったレゾ関係のまとめ考察です。
 レゾに関しては最終回でもう一歩内面に迫る描写があるのかな…と予想していましたが、あくまでそれを匂わせるセリフやシーンのみで、視聴者の想像に委ねる形になっていました。若干説明不足かな、と思える要素もあるのですが、いろいろと見ている側が感じ取れる形にはなっていたので、その辺を想像しながら「赤法師レゾ」について、そして冥王の壷を巡る一連の事件の真相について考察していきたいと思います。

★光を得ることへの執念
 レゾは生まれは名家だったんじゃないかと予想。それも代々聖職者とかそんな家系で。あくまで想像だけど、あの気品とカリスマ性は生まれ育ちがよかったところに起因しているんじゃないかな、と。
 聖職者の家系に生まれたレゾは生まれつき目が見えなかった。しかし、それ以外のことは人並み以上にこなせる。頭脳明晰・魔道の才能にも長け、身体能力も高い、そんな少年だったような気がする。目については、彼の両親やら周りの人も治す方法を探していたと思う。でも、その方法は見つからなかった。その一方で、両親は割り切るようにとも諭していたのかな、とも。レゾは優れた面が多かった分、唯一思い通りにならない「目が見えない」という点についてはどうしても克服したいという思いは強かったのではないか。そこで、成長したレゾは自分自身で治療法を開拓するべく、白魔法や黒魔法の研究を始めた。最初は本当に純粋に「目が見えるようになりたい」・・・その思いだけだったんだと思う。
 ゼルはかつて「レゾが各地で病人を救って奇跡を起こして見せたのは自分の目を治すための実験台」と言っていたけど…これはあくまでゼルの視点で…裏切られたと知った上で見た認識なのではないかな、と思う。治療法を見つけていく過程では実験というものも必要だろうし、そういう意図もあったのかもしれない。でも、自分と同じように目が見えずに苦しんでいる人を救いたいという思いもあったんじゃないか?そんな風にも思える。12話でタフォーラシアの民が助かって嬉しそうにしていた彼の姿を見るに、救われて喜んでいる人々の声を聞くのは嬉しいことだったんじゃないかな、と。そんな思いは目の治療以外にも数々の「奇跡」を起こしてみせた。「赤法師レゾ」は聖人としてとどろいていくことになる。
 しかし、その一方で、「他の人間の目は開くのにどうして自分の目は開かないんだ」という負の感情も生まれて、レゾの中で次第に大きくなっていった。聖人と呼ばれようとも、彼も人間ゆえ…。その思いはエスカレートして、次第に「どんな犠牲を払っても自分の目を開かせたい」とまで思うようになってしまった。思いが増幅されていった背景には「魔王の波動」もあったと思われる。
 いつしか生まれた黒い意志。レゾが11話オゼルに語っていた言葉・・・「人間は感情によって行動を決める。それとは別に善悪の概念がある。感情によって行った行動が善になればいいが、悪になることもある。」これはレゾの中の葛藤の象徴のような言葉。感情に流されて道を踏み外していいのか?「人の心」について悩みながらもどうしても止められない・・・。
 レゾにとって、魔道に関して天才的な才能があったことはある意味不幸だったのかもしれない。力がなければ…目の見えない自分を受け入れるという道を選んだかもしれない。しかし、彼の才能はその選択肢を拒み続けた。「どうしても世界をこの目にしたい」・・・その強く純粋な意志と結びついて。

★冥王の壷とオゼル
 レゾは魔道を使って延命をしていて、あの容姿ながら実は100歳以上。いつしか人としての道を踏み外したレゾは、長きに渡って目を開かせるために様々な実験を行い、失敗していった。その過程でたどり着いた実験の一つが冥王の壷による魂の移行実験だった。
 「他人の目を使うことで光を得られるのではないか?」そう考えたレゾは冥王の壷を作り出した。実験台として選ばれたのはタフォーラシアの民。デュラム病という疫病を自らタフォーラシアに撒き(ここは暈されてますが)、救うふりをしてまんまと実験台を手に入れた。
 冥王の壷により魂を取り出す実験、そして仮の体に定着させる実験は早い段階で成功した。でも、人体から人体への移行は容易ではなく、検証やレゾの魂を収めるのに相応しい器を探すために多くの実験体と長い時間を要した。
 レゾは約10年程かけてポコタの体を見つけたわけだけど…もっと長期化することも考えていたのかも知れない。この冥王の壷実験にかかりっきりだったわけではなさそうだし。そもそも、人体移行による方法が100%うまく行くという確信もなかったのかも知れない。そこで、レゾは冥王の壷の特性を利用して、もう一つの仕掛けを組み込んだ。それは「自分の身に何かあったとき、魂を壷の中に封印する」という仕掛け。魂を肉体から取り出す工程は早い段階でうまく行っていたようなので、そこをもう一歩つめて仕掛け作りをした。レゾの「目が見えるようになりたい」という執念は「死んでも諦められない」状況にまで達しているのでは?というのは想像に難くない。
 将来壷に魂が封印されることになることを見越し、レゾはオゼルを作り出した。来るべき時に備え・・・壷を守り、自身を復活させることを目的に。でも、人形であるオゼルは「何の目的もなく無為に生きる」ことができない。というより、レゾがそういう風に作ったようで。壷に魂が封印されるまでの間はオゼルは無目的になってしまう。そこでもう一つの命令・・・「壷の持ち主に仕える」が与えられた。オゼルはほんとうによく働くメイドさんで。そういえば、夜中でもせっせと働いていた。「何もしないで生きる」ということができない・・・許されない存在。あの働き者っぷりにはそういうことを表現する意図もあったのかも。本来の主はもちろんレゾ。だけど、壷の持ち主は仮の主となる。その仮の主と「契約」を結び、守り、仕える。それがオゼルのあり方。生み出された当初はレゾに直接仕えていたけど、その後はいずれレゾの魂が封印される冥王の壷と共に主を転々とするようになった…そんな経緯ではないかと想像。

★レゾの滅びと生まれる迷い
 レゾは思ったより早く自分の魂を移せる依り代(ポコタ)を見つけて、魂を移行すべく準備を始めて…そこに飛び込んできたのがゼルガディスが賢者の石を見つけた、という情報。こんなことを言うとポコタやタフォーラシアの民がかわいそうなんだけど…レゾのとって恐らく本命は「賢者の石により魔王を復活させ、魔王の力により目を開かせる」だったんじゃないかな、と。ただ、賢者の石は実在するかどうかもわからない。そういう意味では「魂の移行」はより現実的な方法だけど、賢者の石が見つかったとなれば、そちらを使ったほうが確実度は高い。自分に反感を持っているゼルに賢者の石を渡すわけには行かないという思惑もある。さらにはレゾの中の魔王が潜在意識の奥底でレゾの行動を誘導したのかもしれない。レゾは賢者の石の奪取と魔王の復活に向けて動き出す。
 賢者の石を手にしたレゾは魔王を復活させ、目を開かせることを願おうとする。しかし、待っていたのは予想外の結果。賢者の石の力でレゾの目は開かれるが・・・魔王はレゾ自身の中に眠っていた。一瞬の光と引きかえに、レゾの魂は魔王に飲まれてしまう。それはレゾの望んでいたことではなかった。
 魔王と対峙したリナは魔王の中にレゾの意識がまだ残っていることに気が付いた。そこでリナはレゾに問いかける「赤法師レゾ!選びなさい!このまま魔王に魂を食らい尽くされるか、あるいは自らのかたきをとるか。」。その問いかけにレゾは歓喜の声を上げ・・・魔王の意識を押さえ込む。重破斬を食らった魔王は静かに滅びゆく。レゾは「ありがとう・・・」最後にそういいながら消えて行った。ここまでは無印の流れ。
 しかし、レゾは滅びることができなかった。滅ぶはずの魂は冥王の壷に封印されてしまう。それは、言うなれば自らの狂気が生み出した牢獄。壷の中に封印され・・・意識を取り戻したレゾの中に迷いが生まれる。どうやら魔王の魂も傷つきながら一緒に封印されているようだ。一度見てしまったゆえに、更に強まってしまった「光を手にしたい」という渇望。それでも一度は滅びを受け入れた身。このまま滅ぶべきか?復活には依り代という代償も伴う。これ以上感情に従って行動してもいいのか?魔王の魂の行く末もどうするべきか。光を手にするために自分が復活すれば、魔王の魂も復活させてしまうことになる。しかし、このまま壷の中に封印されたままでいたとしても…いずれ力をつけた魔王は自分の魂を食らい、壷を破って復活してしまうだろう。それがどれだけ先のことになるのかはわからない。せめてギリギリまで引き伸ばすべきか?でも、光をこの目にしたいという渇望はぬぐえない。どちらにしろ・・・いずれは滅ぶことになるのだろう・・・。覚悟を決めつつもそのことに悔しさや空しさもあったのではないかと思う。目が開かなかった原因もわかった。それは自身に魔王が封印されていたから。12話でレゾは「全てのことに犠牲はつき物だ。それが礎となるのがこの世の断り。全てのものが例外ではない。お前たちも、そしてこの私でさえも」と言っていた。自分を犠牲と言うその理由は魔王が封印されていたことだと思われる。レゾの身に魔王が封印されていて、そのせいでレゾの目は開かなくて苦しんで。だけどその犠牲の上に人々は平和な日々を送ることができた。「全てのことに犠牲はつきもの」悟りを開いたかのように語っていたレゾだけど、自分に言い聞かせていたのかも知れない。数々の思いがレゾの中に浮かんでは消える・・・。そんな葛藤が続くこと数年。

★動き出す運命の歯車
 冥王の壷にレゾの魂が封印されたものの、オゼルはレゾの復活に向けて動き出せずにいた。復活するべきかせざるべきか、迷っているレゾが待ったをかけたから。レゾの決断を待つ間、オゼルは仮の主に使える日々を送り、いつしかジョコンダの城へやってきた。ジョコンダは好事家であったようで、動く人形オゼルを面白がって手元に置いていたんじゃないかな、と予想。「魔王の波動」は人間の負の感情を刺激するようで、逆に負の感情を胸に抱いたものは知らず知らずのうちに壷に近づいてしまうという要素もあったんじゃないか・・・これもまた予想だけど。「欲望」という感情に支配されていたジョコンダは壷に近づき、その感情をさらに強めていく。タフォーラシアの悲劇と絶望から復讐心が芽生えてしまったデュクリスは、ジョコンダの財力に目をつけ、ザナッファー復活のために彼女を利用しようとする。ジョコンダの元にはゼロスも何やら意味ありげに現れた。そこにリナ達が絡んできた。ジョコンダはリナを抹殺すべく、暗殺者ズーマを呼び寄せる。ズーマは消すことのできない心の闇からリナに歪んだ恨みを抱いており、その感情をリナへとぶつける。
 リナが近くに現れたことを知ったレゾは一つの決断をする。復活すべきかせざるべきか、魔王の魂をどうするべきか?・・・決めることができない自身の思いを「どうしても見たかった光」とまで見込んだリナとその仲間達に託そう、と。その結果を「運命」として受け入れる。その決断を元にオゼルに命令を下した。これがREVOLUTION〜EVOLUTION-Rの裏側の流れなのでは?
 レゾの純粋な望みは「ポコタの体を依り代にして復活。一目でいいから光を目にして、その後に蘇った魔王と共にリナ達に滅ぼされる」というものだったと思われる。結果的にこの望みは全て叶ったけど、そこにたどり着けるかどうかについてもリナ達に託していたように感じる。レボ最終回でのオゼルの言葉・・・「これも・・・運命ですか?レゾ様。あなたは望まれた。己の魂の復活と滅亡。それをあの方々に託したのですね。運命を切り開ける力を持ったあの方々に。」これを考慮するに・・・。
 その背景には2つの要素があったんじゃないかな。一つ目はレゾは心の奥から渇望する望みだとはいえ「一目光を見たい」という自分の感情に流されて復活を望んでいいのかどうか迷いがあったこと。二つ目は本当にリナ達が自身の運命・・・「魔王」を託してもいい相手なのかもう一度試したかったこと。そこですぐにはオゼルに壷を渡させず、少し回りくどい手をとった。リナ達が壷にたどり着けなければ、もしくは復活を拒めば、このまま闇の中を彷徨い続け、いずれは魔王に食らい尽くされる運命を受け入れよう・・・そう思っていたのではないか?ある意味賭けのような感じでもある。

★立ちはだかる二つの壁
 リナ達に自らの運命を託すことを決めたレゾは、リナ達を試すため、そして躊躇いながらも諦め切れない自分の望みが叶うかどうか「賭け」を行うために二つの試練を用意した。それがザナッファーとズーマ。と言ってもレゾが黒幕、と言うわけではなく、元々心の闇に囚われて行動を起こすデュクリスとズーマに少し力添えをしただけで、事件そのものはレゾがいなくても起きたと思われる。
 まずはザナッファー。「決められない思いを運命に託す」・・・この考え方はデュクリスと同じ・・・すると、恐らくはこの運命論をデュクリスに諭したのはレゾだったんじゃないかと思う。レボ13話でデュクリスが語ったように、オゼルはデュクリスにコンタクトを取っているようだし。デュクリスは人間を憎み、滅ぼしたい衝動と「痛みを知れば優しくなれる」=まだ改善の余地がある、と信じたい思いの間で揺れ動いていた。怒りという感情に流され、ザナッファーを復活を目論見、後戻りできないところに来ていながらも、自身の行動に迷いがあった。そこにオゼルが最後の一押しをした。「運命に託してみませんか?」と。「ロード・オブ・ナイトメアの力を使った魔法ならザナッファーを倒せる。その力を扱えるもの・・・リナ=インバースがザナッファーを倒せるかどうかが運命の分かれ道だ」・・・こんな風な流れでリナがL様の力を扱えることをデュクリスに話したのではないか?デュクリスはこの考えを受け入れ・・・ザナッファーと運命を共にすることを決意する。デュクリスはオゼルの・・・レゾの言葉がなくてももう止まれなかったとは思うけど。
 レゾとしては、リナ達がザナッファーを倒せることにある程度確証はあったようにも思える。ザナッファーを倒せないようでは「魔王」は託せない、そうでなくては困る・・・そんな思いを抱きつつ、リナ達に「切り開くべき運命」の一つを提示した。レゾはEVO-R12話で「誰しも、己の魂が望むものには抗えぬ。」とも言っているので、魂の奥の忘れられない怒りに突き動かされて行動するデュクリスにどこか共感もあったのかも。それをリナ達に止めさせる行為はある意味テストケースでもあるし。ザナッファーに関しては、デュクリスとリナは直接の絡みがなく、強制はできない形なので、成り行きに任せてた部分も大きかったかも。
 実際、デュクリスはザナッファーがリナの知識を取り込もうと考えたことを知り、その危険性に気づき、「ザナッファーの敵になるものは排除する」という名目を掲げつつ、実際はザナッファーが余計な知識を得てしまうことを恐れ、リナを排除しようとした。ザナッファーは「光の剣」という倒せる手段はもう一つ残っているし・・・。デュクリスがこんな行動に出た背景としては、心のどこかでやっぱり止めて欲しかったんじゃないかと思う。その思いを託したかった相手はポコタだろうな、と。しかしポコタには荷が重すぎた。デュクリスはレゾが意図したようには動かなかったけど、結果的にはレゾの思惑通り、リナ達の力でザナッファーは倒れる形となり、一つ目の試練は果たされた。
 二つ目はズーマ。これはレゾ的にも確証を持って配した壁だと思われる。ズーマはリナに恨みを抱いていて、リナを殺すべく動くことは間違いなかったから。恨みの件は後から知ったのかも知れないけど、ズーマはリナを殺すための刺客として動いていた、そこは利用できると踏んだか?そこで、新しい宿主をズーマと決め、オゼルにズーマに近づくように命じた。オゼルは「リナ=インバースと戦うなら力が欲しくありませんか?」・・・そんな風にズーマに持ちかけたのでは?ズーマは最初はレゾの壷の力には興味はなく、オゼルが手駒になるなら・・・という考えでそれを受け入れたように思える。レゾの力を借りて魔族の力を取り込んだのは一度敗れて腕を失ってからだったようなので。リナには仲間もいるので押さえ役として手駒が増えるなら、使えると踏んだのかも。壷の主となったズーマとオゼルは契約を結び、以後しばらくオゼルはズーマに仕える。その後はズーマの命に従いラドックの元に壷と共に移動し、ラドックに仕えることになる。
 一度敗北したズーマにレゾは新しい腕を与える。恐らくあれは魔族が姿を変えたものなのかな?と。腕だけ人魔化、みたいな感じ。更には露払い要員として生前契約していた魔族、デュグルドとグドゥザを協力させる。もっとも最終的にはズーマに取り込ませる駒だったみたいだけど。レゾがズーマに力を貸したのは、ズーマがリナ達に対する試練要員だったことと、やっぱり「己の魂が望むものに抗えず」行動するズーマに共感があったのかもなあ。

★「壷を打ち砕いて欲しい」の意図
 少し話が前後するけど、レゾはオゼルにデュクリスへの忠告とズーマとの契約をさせた上で、いよいよリナ達に接触させる。「赤法師レゾの魂の眠る壷を探し出し打ち砕いて欲しい」、そう言わせた。復活の過程・・・依り代に移す直前には壷を壊すことが必要だったようだけど、この言葉の真意はレゾの最終目的である「魔王と共に自分を滅ぼして欲しい」と言うことを遠まわしに言っていたんじゃないかな、と思う。レゾは「復活したい」という思いもあるものの、ストレートにそれを頼むわけには行かない。復活には迷いもあったし、復活できるかどうかもリナ達に託したかったようなので。それに、「復活させて欲しい」とオゼルに言わせた場合、リナ達に警戒心を持たれる可能性がある。何と言うか、あからさまに怪しい。もう魔王が復活したがっているかのような。「打ち砕いて欲しい」と言わせる事で「どういうことなんだろう?」と興味を持たせようとしたレゾの策、かな、と。これは対視聴者の興味を引くという意味でも「打ち砕いて欲しい」の方で有効だったと思う。
 加えて場所はわかっていたのに「探し出せ」とも言わせた。これもやはり「壷にたどり着けるかどうかも託す」という意志の表れだと思われる。
 オゼルは壷を守る存在なのに打ち砕けという依頼をするように命令された。この矛盾により、オゼルは壷に過剰反応して、壷を壊すと言う誤作動を起こしたっぽい。さすがに冥王の壷を壊すわけにはいかないので、普通の壷にそのしわ寄せが行っちゃったのかな、と。
 また、オゼルは「壷が魔族の手に渡るようならその場で破壊せよ」との命令も受けていた。魔族に利用されるのはレゾとしても願い下げだったようで。あとはゼロスの目的が壷の中の魔王を蘇らせて、その力を使って世界を滅ぼすことではないことにはレゾは早い段階で気づいていたのかも。ゼロスは壷を手に入れる機会はいくらでもあったのに、泳がせていたから。壷を壊すことで魔王を蘇らせる可能性があったとしても、「壷を壊す」と脅しをかければ、魔王復活が目的ではないゼロスは引く・・・そう読んでいたのかも。

★復活するべきか、せざるべきか
 紆余曲折の末、ズーマは倒れ、冥王の壷はリナの元へと渡る。とりあえず「リナ達が壷にたどり着く」というレゾの目的の第一段階は叶った。第2段階は「復活するべきなのかの判断をリナ達に託す」。オゼルにもリナ達が壷にたどり着いた時点で、そこからは作られた目的である「レゾ復活」及び「壷の守護」に向けて行動せよ、という命令が出ていたんじゃないかな?ただし、復活するべきかどうかの判断はリナ達に託せ、と。
 ここでレゾは壷の中からリナ達に語りかけるようになるのだが…内容はすっとぼけ。この10話はギャグ回なので真面目な考察は無意味かも知れないけど・・・恐らくはまだまだ復活への迷いがあったが故なのかな、と。「復活できるかどうか、そして魔王の顛末をリナ達に託す」そう決めたはずが、まだ踏み込めずに先延ばしにしていた。あとは、元々ああいうお茶目な部分もあったのかもしれない。リナやゼルとの久々の再会をレゾなりに喜んでいたのかも。聖人としての側面も持つレゾで、その部分も100%嘘ではなかったろうし。
 レゾは復活するべきなのか?この判断を託すに当たり、当事者が二人・・・ゼルガディスとポコタ。ゼルはレゾに体を改造され、恨みを抱いている。ポコタは依り代として体を提供してもらわなければならない。レゾは彼らの気持ちを確かめるかのように精神的に揺さぶりをかける。実際そんな意図もあったんだと思う。レゾとポコタ、レゾとゼル、それぞれの絡みについては後述。
 レゾが復活するべきか、せざるべきかの最終判断の決め手となったのは「レゾ様にお会いしたい」というオゼルの強い思い。レゾの命令に従うなら、そこににオゼルの意志はあってはならない。でも、レゾの命令に背くことになっても、オゼルは自分の感情に従いたかった。その純粋な思いにリナも反対できず、レゾはポコタの体を依り代に復活する。つかの間の再開の後、最初に設定されていた役目を果たしたオゼルは機能停止してしまう。オゼルはこのことを知っていたんだろうか?真実はわからないけど、もし知っていたとしても同じ決断をしたんじゃないか?・・・そう思う。
 オゼルが人の心を得たこと、そして復活の鍵になったことはレゾにとっても想定外だった。でも、目的の第2段階目「ポコタの体を依り代に復活」は叶った。体を提供したポコタの恩義に報いるため、タフォーラシアの民を救い・・・その後に「光を一目目にして、そのことで蘇る魔王をリナ達に託す」という目的の最終段階を実行に移した。レゾがどうしても見たかった光・・・それは魔王という闇を打ち払って見せたリナの姿だったようで。無印の魔王復活の直前に一瞬だけ目が見えるようになったレゾだけど、その時リナの姿をしっかりと見れていたかどうかはわからない。あの時点ではリナにそこまで思いいれはなかっただろうし・・・。あまりはっきりと印象がないだけに、余計に「もう一度姿を見てみたい」という思いは強まっていったのかも。
 魔王に呑まれていくレゾが見せた表情は印象的。望みが叶ったことは満足そうな、でもそれでいて自身の運命については残念そうな・・・とても人間的な姿。「いずれこうなる運命だった」と言いながら、それをそのまま受けいれて「私は魔王の魂を内包しているから滅ぼして欲しい」とは割り切れなかった。せめて最後のわがままを聞いて欲しかったのかな、と思う。
 以下はポコタとレゾ、ゼルとレゾの絡みにスポットを当てた考察。

★レゾとポコタ
 ポコタにとってレゾはタフォーラシアを救ってくれた恩人にして、絶対のヒーローのような存在。レゾへの恨みを口にするゼルや非道な実験を行っていたという過去の事実を語るリナに対し、ポコタは「レゾはいい奴だ」、と強く主張し、「オレが証明してやる」とまで息巻く。
 そんなポコタにレゾは過去の真実を告げる。タフォーラシアはレゾの実験場だった、と。その発端となった疫病の流行までもどうやらレゾがしたこと。そして、レゾの復活にはポコタの肉体が必要なことも告げた。あまりに冷酷な語り口だったけど、過去にしたことは事実で、それを知ってもポコタは自分を復活させようとするのか?それを確認したかったんじゃないかな?実際にはポコタは真実を受け止めきれなかった。それでもレゾのことを信じたいという思い、そしてタフォーラシアを復活させたいという思いから、体を提供することを承諾する。「私が蘇ってもタフォーラシアを復活させられるかわからない。その時はお前は無駄に肉体を失うことになるのだ」・・・そうポコタに語ったレゾ。「どうしても光をもう一度目にしたい」という渇望を抱きつつ、ポコタの肉体を奪ってしまうことにも躊躇いがあったように思える。
 タフォーラシアを復活への強い思いから、ポコタはレゾ復活を反対するリナ達と対立し、本気で攻撃までしてしまう。紆余曲折の末、レゾは蘇り、タフォーラシアも救われた。レゾがオゼルに語った「人間は感情によって行動を決める。それが善になればいいが悪になることもある」という言葉。ポコタのケースというのは結果的にはあるものの「善」になったパターンなんじゃないかと思う。強い感情、願いから出た行動という意味ではレゾの「どうしても光を目にしたい」という思いから生まれた行動と出所は一緒。どちらに転ぶか・・・それは紙一重の違いなのかも。
 蘇ったレゾはタフォーラシアを復活させ、疫病で苦しむ人たちを救おうとした。その姿にポコタは素直に「ありがとう」とお礼を言う。「やっぱり自分が信じた通りの人だったんだ」そう思ったんじゃないかな。でも、レゾはその後に「光を目にしたい」という渇望から魔王を解き放ってしまう。レゾが魔王に呑まれる姿を目の当たりにしたポコタの失望したような表情は印象的。「レゾはいい奴じゃなかったのか・・・」ここでポコタはタフォーラシアの真実を受け止めたのではないかな、と。でも、狂える魔王を前に落ち込んでいる暇などなく、今自分にできることを懸命にやり遂げる。魂を自分の体・・・今は魔王が宿る体に戻して、魔王を押さえ込んで・・・「これでさようならか」と思ったその時、まだ魔王の中に残っていたレゾの魂はポコタに優しく語り掛ける・・・「いいえ、あなたは残りなさい」と。レゾの最後の力で生還したポコタは満足そうな笑顔を浮かべる。レゾはポコタが最初に思っていたような絶対のヒーローではなかった。タフォーラシアにしたことを含めて、その点ではレゾはポコタの信頼を裏切っている。それでも、レゾは人として弱い心を持ちながらも、根っからの悪い人ではなくて、「本当はいい奴」だった・・・それを感じることができて、ポコタは嬉しかったんじゃないかな・・・そう思う。

★レゾとゼルガディス
 ゼルがレゾに抱く愛憎がクローズアップされた今作。かつて、ゼルにとってレゾは憧れの存在だった。レゾはゼルの祖父か曽祖父にあたり「生まれたときからの知り合い」で、もう親にも等しいような間柄でもある。でも、ゼルのレゾに対する信頼は「目を開かせる実験台としてキメラ化される」という形で裏切られてしまった。復讐に燃えるゼル。結局、レゾは魔王化してしまったので、それは果たせず。だけど、ゼルは「元の体に戻る方法を探す」という新しい目的を胸に旅を続けることになった。
 一度は忘れたはずのレゾへの恨み。しかし、それはレゾの魂と再会したゼルの中で再び燃え上がってくる。魔王の波動の影響もあったかな?ゼルはレゾに溜まりに溜まった感情をぶつけ、「元の体に戻す方法を教えろ」と迫る。でも、その裏にはレゾへの信頼があったように思える。レゾはキメラの体を元に戻す方法を知っているはず。知らないのに、方法がないのに自分を改造したりはしない・・・そう信じたかった。
 しかし、レゾは冷酷に「方法は存在しない」と告げる。その行動の裏には、復活への迷い。もしゼルが自分を許さず、あのまま壷を海に投げたら、レゾはそれを受け入れて復活を諦めるつもりだったのではなかろうか。でも、ゼルもまた迷う。恨んでいるはずなのに、またも思いを裏切られたのに、それでもかつて信じたレゾの姿が忘れられなかった。
 レゾがゼルに「方法は存在しない」と告げたのにはもう一つ理由があったんじゃないかな?それは、自分と同じ道を歩んで欲しくなかった、ということ。目を開かせる方法を求めることに人生を捧げ、いつしか人の道を踏み外したレゾ。ゼルの「元の体に戻りたい」という渇望は非道にまでは手を出していないけどレゾと近いところまで来ている。レゾはゼルに「運命を受け入れて生きる」という自分ができなかった道を歩んで欲しかったのかも。
 冷静になって、レゾが復活したい気持ちと滅びたい気持ちの間で揺れているのではないか?・・・そう気が付いたゼルはレゾの復活を強く拒めず、成り行きを見守ってしまう。復活したレゾはタフォーラシアの民の病気の治療にあたり、助手としてゼルを指名。かつて彼が信じたレゾが戻ってきたかのような姿にゼルは唖然としながらも従う。レゾはもう目的を果たしたら自分は滅ぶ、ということを決めていたので、残り少ない時間の中で、ゼルに何かを残したかったのかも。
 光を目にすることと引き換えに魔王に飲まれるレゾ。その儚げな姿にゼルも感じるものがあったと思う。魔王との戦いの中、キメラの体は役に立って「ありがたいと思ったことはない」とまで口にする。そして、戦い終わって、「あいつのことはもういいんだ」とすがすがしい表情で語ったゼルは、ようやくレゾを許すことができたんじゃないかな、と思う。キメラの体に関しても受け入れ始めているように感じる。
 ひょっとしたら、受け入れて生きるという選択肢を選んだのかもしれない。ここは暈してあるというか、どちらとも取れるような表現になっているように感じる。というのも、エンディングで船に乗って旅するゼルは何かを探しているようにも見えるから。元に戻す方法を諦めたなら、あそこで示されるのは「キメラの体を受け入れた後のゼル」で、例えば原点に返って人助けをしているようなシーンなんじゃないかな?と思って。私はキメラの体は受け入れつつも、元に戻る方法は探している、というゼル像をプッシュ。これは原作の「ゼルガディス朧月草子」のイメージがあるのも大きいかも。

 さて、長々と書いてきたけど・・・「レゾは悪人なのか善人なのか?」・・・その答えはどちらでもない、いや、どちらでもある、が正解、かな。とりあえず、スレイヤーズ世界内の世間一般で言われている「聖人」は間違い。そして、ゼルが言っていた「聖人のふりをした悪人」という認識もまた間違い。人々の幸せを願いつつも醜い部分や弱い部分も持った一人の人間だったんだな・・・そんな風に感じる。
 レゾが復活するかも?そう聞いて最初は「ありなのか?」とも思ったけど、全てを終えて振り返って見ると、今作のテーマ、リナ・ゼル・ポコタ・オゼル、様々なキャラクターの絡み、そして魔王を内包するというラスボスとしての器・・・全てを考量すると、レゾを思い切って復活させたのは正解だったと思っています。