スレイヤーズREVOLUTIONのリナとガウリイ

 
 以下、スレイヤーズREVOLUTION9話ネタバレの内容になります。


 ズーマに首を締め上げられてピンチになったリナを助けたガウリイ。その後リナが彼に向かって「ありがとう」と言うシーンがあるのですが・・・どうにも違和感がある。でも、「キャラクターに合わない」と単に否定してしまうには、何かがひっかかる。何らかの意図があるシーンなのでは?と思ったので、今回はあのシーンについて考察してみます。
 単純にあの表情から読み取れるのは「戸惑い」「驚き」そういった類のものかな。なんか完全に素になってる感じ。「普段は頼りないガウリイが急に頼もしく見えて面食らった」そんな風に見えるのですが、リナの性格と過去における二人の信頼関係を思えば確かに違和感があります。このシーンを読み解くにはREVOLUTIONにおけるリナとガウリイの関係について見つめなおさないといけないな、と思った。
 最初の感想で「二人の間では助け合うのは当たり前の事だと思うし、リナはガウリイが普段はボケていても、戦闘能力は高いのはわかってるはず」と書いたのですが、これは原作ベースの解釈かな。
 原作におけるリナとガウリイの関係は、一言で言うなら「身内」だと思う。対照的にゼルとアメリアは一緒に旅をしていても、どこかゲスト扱い。もちろん「仲間」という認識はあると思うんだけど。具体的に言いますと、ゼルやアメリアが自分のゴタゴタに巻き込まれてケガをしたりピンチになったりすることを「借り」と感じているような気がありそうなんですよ。6巻では不機嫌になってゼロスに八つ当たりしてみたり、7巻では「あたしのせいで二人がとばっちりを食った」とラルタークに反撃してみたり。でも、ガウリイに対してはそういうのがない。4巻でズーマと戦ったとき、狙われていたのはリナだけだったのに、当然のようにガウリイに相手を任せている。7巻のガーヴ戦で、ラグナブレードで力尽きたとき、絞り出すような声で呼んだのはガウリイの名前。8巻でフィブリゾにさらわれたのがガウリイではなくゼルかアメリアだったら、リナはガウリイに「一人で行く」と言ったでしょうか?多分言わなかったと思う。リナはガウリイに対してある種絶対的な信頼を寄せています。恐らく無意識に。ガウリイはどんなことがあっても自分についてきてくれる、力になってくれる、と。そこまで信頼を寄せる相棒です。自分も相手をフォローし、助けるのは当然と考えているでしょう。一方ガウリイのほうも「リナの保護者」を自称するだけあり、当然のようにリナを守る。そして、ガウリイもまたリナの事を信頼しています。お互いがお互いを信頼しあって、助け合う。お礼を言うことがあっても挨拶代わりというか、軽いコミュニケーション的なニュアンスです。そうしているうちに、気がついたらかけがえのない存在になっていた・・・というのが原作での二人。特に、2部になってからはリナはガウリイに弱さを見せる頻度が高くなります。そこでガウリイはすかさず、フォローを入れて、精神面からも支える存在になります。
 旧アニメシリーズではどうだったか。実は3作ともそれぞれスタンスが違う。
 無印は、リナが原作初期に比べても幼く描かれていました。ガウリイの保護者としての役割は「暴走するリナを止めるストッパー」的な印象が強い。でも、大人と子供、という関係だったかというとそうでもなく、ガウリイも原作よりも幼い感じになっているので、一緒になってはしゃいでいる様な「気の合う仲間二人」という印象かなあ。原作のように、ゼルやアメリアと比べて特別な存在という印象は余り受けないし、恋愛的な要素もほとんど感じられない。
 NEXTは、作品のテーマ自体にリナとガウリイの恋愛が含まれていたこともあり、リナは女性としてガウリイを意識するようになります。で、記憶はないとはいえ、キスまでいっちゃうわけです。
 TRYは、恋愛要素は一周して落ち着いた感じ。マンネリを防ぐためか、リナはゼルとの絡みが増えたし、TRYはフィリアとヴァルガーヴの話だったこともあって、リナとガウリイ二人に焦点があたる機会があまりなかったように感じるので、TRY独自の二人のスタンスというのが強くは見えないかなあ。要所要所では保護者してたし、最終局面で珍しく弱気になるリナをガウリイが励ますシーンなんてのもあったし、表には出ないけど2シリーズを経た土台の上に確固とした信頼関係は築かれているんだと思う。
 さて、やっと本題。REVOLUTIONではどうか。一ついえるのは・・・8話までの段階でガウリイはリナの保護者としての役割を全くと言っていいほど果たしていません。ろくな剣を持たされていないこともあり、戦闘での見せ場のない状況が続いてしまったし、「暴走のストッパー」としても機能していない。リナに言われるがまま、とりあえずついていっているだけ・・・極端な話だけどそう見える。
 ぶっちゃけアニメのガウリイは原作に比べると弱いです。これには演出の都合上の理由から生まれてしまった乖離。まず、アニメは呪文の詠唱が省略されている。これにより原作ガウリイの大きな見せ場ある「呪文を唱える間の時間稼ぎ」の間の戦闘がなくなってしまった。また、アニメの戦闘シーンは見た目が派手、且つ作りやすい魔法中心の構成になっている。この中では魔法が使えないガウリイはどうしたって地味になってしまう。それでも今までは活躍できていたのは「光の剣」の存在が大きい。ビジュアル面でのインパクトもあるし、光の剣はガウリイのキャラクターとしてのアイデンティティなんですよね。ところがREVOLUTIONではガウリイは光の剣を持っていません。ここで思い出したのが、ラジオドラマスレイヤーズねくすとら第3話の夢オチシリーズ。ゼルが人間の体に戻るも、元に戻ったら「キャラクターが立っていない」と言われ、キメラの体に戻る、と言い出すというギャグ話。その中でもガウリイのアイデンティティとして「光の剣」が挙げられていました。そう、REVOLUTIONのガウリイはズバリ、キャラクターが立っていない状態からのスタートだったんです。もちろんガウリイの魅力はそれだけじゃないのはファンなら分かっています。ただ、分かりやすい特徴として「光の剣」がない。となると、残るのはボケ役としての道だろうな、と。
 これじゃああんまりなので、少し真面目な観点からお話をします。NEXT最終戦。リナは己の全てを引き換えにガウリイを助けることをL様に願います。この契約はゼロス曰く「等価交換」。そして、混沌に帰ろうとするリナを引き止めるためガウリイが差し出したのが光の剣だった。光の剣はガウリイの力の象徴です。リナを守り、保護者足りえた力。それを手放せば、今までの関係を維持できないかもしれない。でも、そんなことは関係なかった。ただ無心に、リナに帰ってきて欲しかった。・・・結果的にこの後光の剣はガウリイの元に戻ってくるわけですが、それはまた別の話。
 レボの話に戻ります。そんな「力の象徴」を持たないガウリイというのは、保護者としては欠けた状態なんです。でも、リナはそんなことは気にしていないんじゃないかな。光の剣を持っているから、とか、自分を守ってくれるから、とか、そんな損得勘定なしに一緒にいたい、一緒にいるのが当たり前・・・そこまでの存在になっているのではないかと。もちろん、口にも態度にも出しませんが。「剣探し」にさほど拘っている様子が見えないのも、そのあたりの意識が根底にあるからなのかも。アニメはNEXTで恋愛要素強調されていましたし、TRYのエピソード時代の時間も経過しているので、同じ「剣探し」を目標に掲げていても、REVOLUTION開始時点では、原作1部終了時よりは進んだ関係になっていてもおかしくない。
 とは言え、リナも光の剣がないガウリイが弱くなってしまったことは認識している。そこで、逆に、自分が守らなくては・・・と思っているのでは?これは、ズーマと戦おうとしたガウリイを押し止めたリナの姿からも伺える。さらには「剣がないと何にも出来ない人は下がってて」というセリフから、剣がないガウリイを弱いものと決め付けて侮っていたようにも感じられる。でも、ガウリイはリナを助けた。これまで、「リナに言われるがまま、とりあえずついていっているだけ」・・・そう見えたガウリイが、ここに来てようやく、リナの意志を無視してリナを守ろうと動いた。リナはそれに驚いてあんな戸惑いの表情を見せ、思わず「ありがとう」という言葉が口に出たのではないか・・・それが私なりに出したこのシーンの解釈。光の剣という力がなくても、ちゃんと自分を守ってくれる、それを改めて認識したのかな、と。
 このシーンはREVOLUTIONのガウリイにとっても転機となるシーンになりそうです。きっとこれから今までの鬱憤を晴らすくらい、活躍してくれるのではないかと期待しています。
 この解釈に思い当たるまで、あちこちの感想サイトさんを回って参考にさせていただきました。読んでいると受け入れている方が多かったようなので、やはり自分の思い込みだけが全てではないんだな、と再認識。また、Web拍手に投稿くださった方もご意見ありがとうございました。やっと答えが出ました。