スレイヤーズ10ソラリアの謀略 新装版 ネタバレ感想

 新装版を再読した感想です。今更だが、やっぱり2部は読めば読むほど味が出る。作品の勢いや謎解き要素を含むストーリーというのは確かに1部の方が上で、一読しての面白さは1部の方に軍配が上がると思う。でも、行間のニュアンスやそこから垣間見えるキャラクターの隠れた持ち味、そして根底に流れるテーマは2部の方が勝っていると思う。私が偉そうに言うことではないですが、小説としての完成度が格段にパワーアップしている、そう感じます。何回も読んだはずなのに、読むと新しい発見があったりするんですよ。さあ、2部を読んだことがないor昔読んだことあるけどなんかいまいちだった、っていうあなた!今すぐ本屋さんにGO!新装版を買いましょう。特に「昔読んだけどいまいちだと思った」っていう方にもう一度読んでみて欲しいです。多分2部の良さを受け入れるには年齢的なものとかも関係してくると思います。私自身もそうでしたから。なんかあんまり年の話するの切ないけど、やっぱり年を重ねると得るものもあって、その辺の経験値を元に読むと何か感じるものがあると思います。
 そんなこんなで、新しく気がついた部分を書いてみます。あとがきのネタバレも含みます。10巻ネタバレ、って書いていますが、全15巻の内容を含みます。


 いきなりですが…冒頭の新しく購入した安物魔力剣を巡る夫婦漫才の裏側にあるものが萌えます。そもそもリナとガウリイが一緒に旅をしていた理由はリナ的には「光の剣が欲しいから」というもの。でも、これが次第に建前になったことは、8巻のシルフィールの指摘により表面化する。そして、1部の最後で光の剣は失われ、リナは新しい旅の理由を考え出します。「光の剣に代わる魔力剣を何か見つけてあげようじゃないの!」で、「あたしのせいで光の剣も目をつけられたわけだし」「そういうのが見つかれば惑うの研究材料にも使えるから」と付け加えます。で、それを聞いたガウリイは「剣が見つかるまではいっしょ、っていうわけだな」と応えて、二人の新しい旅が始まります。
 ところが…この10巻の冒頭に注目。魔力剣を探している理由というのが地の文の部分で語られています。「普通の剣でいいじゃないか、と思う人は世の中を甘く見ている。この世には純魔族や悪霊など、普通の剣ではどうにもならない奴らがいる」「悪霊程度ならガウリイは見物していてあたしが攻撃呪文で吹っ飛ばす、というのでもいいのだが、純魔族が相手だとそうもいかない」「しばらく前、純魔族を相手にしたのだが、普通の剣しか持たないガウリイの役に立たないこと役に立たないこと」…これ、もう完全に二人一緒に旅をすることを前提に話していますよね?一緒に戦っていくためには魔力剣が必要、って流れになってる。あれ?剣を探すのが目的だったんじゃないのw?目的と手段が入れ替わっていますよwこの矛盾にリナ本人は気づいているんだろうか?いや、気づいていないだろうな。13巻のラストで剣が見つかった後にまた一緒にいる理由を探しましたから。そう…「剣を探すために一緒に旅をする」は単なる建前なわけで、リナも既にこの時点で無意識なところでは分かっていたんです。本当の理由は「一緒にいたいから」がFAと。このもどかしさは萌えるw
 ソラリアの謀略は2部の中にあって、スレイヤーズのエンターテイメント性が全面に出された話のように感じます。魔力剣を手に入れるため、反乱の証拠をつかんでゆするんだ!と、主人公らしからぬ行動に出る辺りは、リナの型破りな性格の持ち味。潜入から始まり、真相が分かってからは真っ向からケンカを売りに行ったり、結構やりたい放題暴れてます。それにストップはかけつつもリナを信頼してついて行くガウリイの良さ。ラーヴァスも本編の人間敵キャラとしては珍しく単なる小悪党なんですよね。それ故、問答無用で打ち破る爽快感のようなものがある。そんな比較的軽めの話が、14巻の悲劇に繋がっていく構成はお見事としか言いようがない。
 あと、注目したいのが人間と魔族の合成実験をやらかしている魔道士にマジ切れするルーク。ここでのルークとミリーナのやりとりは、ミリーナの最期の言葉の伏線になっているわけですが…ルークって人間の黒い部分について何か特別な思いがあるんだろうか?確かにここでの実験が非道なものだったことはわかるし、ルークは感情の起伏が激しいタイプ。だけど、あそこまで激高するには何か過去に嫌な思い出があったのでは?そんな風に感じる。ミリーナに出会うまでは暗殺者をやっていた、彼女との出会いで足を洗った…分かっているのはこれだけ。暗殺者時代に人間のどす黒い部分を散々見てしまっているのかなあ。そして身近な人とか仲間とか、魔道の実験体にされた人とかいたのかも知れない。二人の過去の話、読みたいです…。昨日神坂先生に渡したファンレターにもその事書いてみました。作者の中では絶対エピソードできあがってるよなあ、これ。

 新装版あとがきの話。ホテルソラリアって…これ?ほんとそのまんまだwそしてシェーラと愉快な同僚達の名前の由来も明らかに!ブラスターでも語られてましたが、あとがき登場により正式設定ですねw「最初は単なるネタ」って言ってますけど、ちゃんと本筋にも関わってくるんだもんなあ、さすがだなー。

 最後の表紙の件。芸コマすぎる今回の表紙。右下のザインが9巻:人間、10巻:人魔になってる〜!そろそろあらいずみ先生の画集出ないかなあ。この表紙絵は大判且つロゴを取ったバージョンで見たいよ。その時は富士見の人に頑張って貰って一枚絵になったピンナップをつけて貰おうw