姉ちゃんの「がんばったじゃないの」SS

 めがぶらのこんな質問コーナーから妄想…

●リナの姉ちゃんはリナが重破斬使えることや、魔王などの高位魔族を倒したことを知っているのでしょうか?
 それに対する感想はどんなものでしょう?

神坂「ルナ姉ちゃんも万能というわけではないので、現時点では知らないと思います。
 でも、もし知った場合には『がんばったじゃないのー』と軽く認めてくれると思います。
 そんな運動会のかけっこで2等を取ったくらいの誉められぐあいに
 複雑な表情で『あー、うん』と答えるリナ。」

 Twitterでお話していたらりびさんが「またどの時点でどんな報告の仕方や反応するかで、リナさんの成長的なものも見られて面白そう」みたいなことをおっしゃっていたのに触発されてちょいと段階的にどんなふうになるのかSS書いてみました。
 姉ちゃんに旅の話をするリナ…果たしてどんな反応があるのか…?という妄想小話でございます。作中では里帰りしていないタイミングのifも含みます。お楽しみいただけてたら嬉しいです。そして他のパターン妄想も受付中ですw


ケース1 すぺしゃるのころ

「でね、頭きたから、前に姉ちゃんと一緒にディスルに行った時に耳にした口伝を元に呪文組み立てたら金色の魔王の呪文うっかり使っちゃった。これがとんでもない威力で!竜破斬なんかもー、めじゃなくて。そのイルマードの海岸の一角には入江ができちゃって、しかもそこは生き物寄り付かなくなっなとか。ちょっとばっかりキケンな予感しまくるんで、協会には報告してないけど…ま、この呪文使えるのはあたしくらいなもんかなー」
 ちょいと自慢げに言ってみる。…さすがの姉ちゃんもびっくりするはず…と思いきや…
「ふーん。」
「ふーんて…それだけ?我ながらとんでもない呪文作っちゃったわけで」
「そんなことより…思い出のイルマードに死の入江を作ってくれた、と…」
「はっ!しまった…!いや、それはそのものの勢いつーか、報酬でないとかあり得ないこと言い出すから…」
必死に言い繕うあたしの耳にこきゅこきゅと、指を鳴らす音が聞こえて…(以下残虐な描写のため自粛)


ケース2 1巻のあと

「最後は賭けだったけど…光の剣に重破斬の力を乗せて…魔王に残っていたレゾの心の力をを借りて…なんとか魔王を倒せた、って感じかな。いやー、まさか魔王と戦う羽目になるなんて、人生何があるかわからないもんねー」
 へーぜんを装いつつ、ちょいと武勇伝風に語ってみる。
 今度こそ…姉ちゃんも驚くかと思いきや…膝の上で丸くなる猫を撫でながら…
「へー、がんばったじゃないのー」
 え…軽っ!いや、がんばったけども!そんな「運動会のかけっこで2等になったの、すごいねー。がんばったねー」、なノリで言われても!
 …生きるか死ぬか、世界の存亡を賭けた感じだったんだけど…。
「あー、うん…」
 あたしはなんとも複雑な返事をした…。


ケース3 15巻のあと

「彼は…滅びたがっていた…あたしたちの手で…あたしは、それに気付いて…応えた…。だから、本来『魔王』には効くはずのない竜破斬で…『魔王』は滅んだ…。」

 あたしは、覇王軍の策謀から『魔王』の復活…そして、蘇った「魔王」が滅びた経緯を静かに語り終えた。
 感情はどこか遠くに置いて、事実だけを話したつもりだったけど…やはり重い…。
 そんなあたしに、姉ちゃんは
「がんばったじゃないのー」
 やはり軽い口調で返す。でも心なしか声が優しげに感じるのは気のせいだろうか。
 あたしは苦笑しながら
「またそれ…?」
返す。
 でも、そうだ…がんばった…のかもしれない。つらい結末だったけれども、向き合った。
「ま、そうかもね…」
 あたしは小さくつぶやいた。
 ほんの少しだけ気が軽くなったような気がした。