スレイヤーズEVOLUTION-R最終回に向けて

 スレイヤーズEVOLUTION-R、いよいよ明日最終回です。ということで、最終回に向けて、最後の考察記事です。以下、12話までのネタバレ感想。12話までの簡単な総括+最終回展開予想的なものを含む内容です。

 EVOLUTION-Rはテーマを中心に見ると非常に上手い構成になっていると思います。スレイヤーズEVOLUTION-Rのテーマは「人が持つ二つの心」。感情と理性の間に揺れ動く心から生まれる行動。時にはそれが「悪」とされることもある。わかっていてもその行動は止められないのか…?感情とは?心とは?そんなテーマを描くべく構成されているように感じます。
 思えばデュクリスも二つの心に翻弄された人物でした。REVOLUTION段階ではその心の裏にあるものを上手く伝え切れていませんでしたが、EVOLUTION-Rではしっかり伝わるように描かれました。
 まずは5話で軽くジャブ。レゾが善か悪かの見解の違いから対立するゼルとポコタにリナは「そのどちらもが本性だったのかもよ」と諭す。ここで描かれようとするものがはっきりと言葉にされるわけです。
 続くヴェゼンディ編ではズーマ=ラドックの二つの心が描かれる。親としてアベルを思いながらも、胸のうちでは妻を無残に失った絶望を忘れられず狂気に走っていく。それを肌で感じるリナ。
 最終章ともいえる冥王の壷編。繰り返し描かれるレゾのライトサイドとダークサイド。それに翻弄されるゼル・ポコタ・オゼル。彼らもまた「人の心」ゆえ思い悩む。リナはやはりそれを間近で見守っている。
 そして…復活を遂げたレゾは、「世界の危機と引き換えにしても、どうしても目に光を得たい」という感情をさらけ出し、そしてリナに迫る「さあ、私を滅ぼせ!あの時のように!」。どうやらレゾが最後にどうしても目にしたかった「光」と言うのはリナのことのようです。「人が持つ二つの心」から生まれた今回の事件。その集大成がリナに投げかけられた。己の感情に従い行動を起こし、その顛末をリナに託してきたレゾに対し、リナが何を見せるのか?というのが最終回の一番の見所でしょう。
 ストーリーの展開自体は王道的なものになると思う。オープニングにヒントが示されている通り、リナが重破斬を使ってレゾを滅ぼす…この流れは9割堅いのではないかと予想。ただ、単純に「強敵を倒しておしまい」になるのではなく、その流れの中でドラマやテーマを見せてくれる作りになると思う。重破斬は強力な呪文というだけではなく、「リナの決意を示す呪文」という側面も持っています。レゾの思いに相対し、何かを決意して重破斬を放つのではないか…?そんな気がします。…そんな「正面突破」なリナ、すごい見たいぞwオープニングのイメージの集大成が最終回に来ることを期待。
 以下、リナ以外のキャラクターについて、12話までのまとめと最終回に期待することを書いてみます。
★レゾ
 まずはレゾ。「滅び行くもの」とサブタイトルに示されているのはまずレゾのことでしょう。複雑な思いを抱きながら滅び行く彼は私たち何を残すのか?出来れば、レゾの内面にもう一歩迫れる過去話みたいなものがちょろっとあるといいな、と思います。
 
★ガウリイ
 12話の光の剣を準備していたガウリイは地味なシーンながらとってもかっこよかったです。リナとの信頼関係、彼女を支えようとする決意は見ていて嬉しくなってしまいました。12話はガウリイ・ゼル・アメリア3人の未来の姿が垣間見える回だったと思うんです。ガウリイの未来と言うのはズバリ、リナと共に歩むこと。普段はリナの判断に従い、後ろを護る。リナが弱さを見せたときは自分が前に出て道を示す。そんな原作2部のガウリイに繋がるような描写だったと思います。EVOLUTION-Rの先にあるであろう物語でリナは一つの試練にぶち当たります。でも、きっとその時にガウリイはリナを支えてくれるだろう…そんな風に思えました。最終回でも「リナと共に歩むもの」として、彼女の決意を後押しするような役割を担ってくれることを期待します。

★ゼルガディス
 今作ではゼルとレゾの関係に改めてスポットが当たりました。その落としどころがゼルに期待するところNo.1です。滅び行くレゾはゼルに何かを残すのか?残して欲しい、そう思います。
 12話で垣間見えたゼルの未来…それは原点回帰ではないかな、と思います。そもそも、ゼルがやりたかったことは、レゾへの復讐でも体を元に戻す旅をすることでもなく、10話の回想で語っていた通り「弱いものの力になる」ことだったはずです。それゆえ、弱者を救う賢者としてのレゾに憧れていた。12話では、タフォーラシアの民を救おうとしたレゾの姿にかつての「賢者」としての面影を見出し、思わず素に戻ってしまったような表情を浮かべます。
 12話のゼルは…ひょっとしたらキメラの体を受け入れて生きる、という選択肢についても考え始めていたかもしれません。キメラの体のままでもデュラム病患者に薬草を与えたように、弱いものを救うことは出来る。レゾはそれを教えたくてゼルを指名したのかも…。更に勘ぐるなら、目を開かせるために非道に手を染めた自分と同じ過ちを、ゼルには繰り返して欲しくないのかも知れない。今の自分を受け入れて生きる…レゾには出来なかったことをゼルに託したのかも。「あきらめ手放した思い出 悔やんで泣いたならそれでいい」…砂時計の歌詞が浮かびます。
 とは言え、「ゼルが元に戻る方法」は神坂先生の頭の中にはあるそうで、捜し求めていれば見つかるという可能性は大。最終回の後、ゼルはもう一度希望を胸に元の体に戻る方法を探す旅へと出るのかもしれません。でも、レゾの思いは組んで、他人を犠牲にしてまで元の体に戻る道は選ばない…そんな気がします。そして、今までは「元の体に戻ったらどうするか?」の部分までは考えていなかったような気がします。シメサバの話しかり…ってギャグを例に出す場ではないかwだけど、その先が今回の旅で少し見えた。彼が憧れたレゾのように、弱いものを救う旅が新たに始まるのかも知れない。
 戦闘面ではかっこいいラ・ティルトを使わせてあげて欲しいけど…どうだろうか…。

★アメリア
 アメリアはREVO、EVO通して王族としての姿が描かれていました。ヒロイックサーガフリークのドタバタプリンセスは大分大人になりましたね。ギャグ回ながら3話でアメリアが語った「父への憧れ」というのは実は深いのかな、と思っています。旧作ではことあるごとに「正義!」を口にしてきたアメリア。今回はそれが少ない。アメリアは無印〜NEXT〜TRYの旅を通して、「正義」は口にするだけでは成し得なくて、その形も一つではないことがわかったと思うんです。そこで、自分が成すべき「正義」について考えた結果、行き着いたのが「父の教え」だったんじゃないかと思います。「困っている人を放ってはおけない」という父の姿に自分が成すべき正義の形を見出したのではないかと。それゆえ、タフォーラシアが疫病に襲われたときに、セイルーンが手を差し伸べなかったという事実はショックだったと思います。たとえフィルさんがこの決断に絡んでいなかったとしても…。
 その罪滅ぼしという思いが、今回ポコタの旅に同行した裏側にあったでしょう。12話ではそれを成しえて…「父さんも喜んでいると思います」と口にした。自分の成すべき正義は父の教え。アメリアの未来はやはり、父の後を継いで王族として「正義」を広めていくことでしょう。跡目争いなど王宮内部のゴタゴタが多いセイルーン。そんな逆風の中でも正義を貫いて欲しい。その先がゼルと交わるのか…?クリアすべき問題は多いかもしれないけど、実は二人の「弱いもの、困っている人を救いたい」という胸の内にある思いは同じだったことが判明した今作。いつかは交わる、と信じたいです。
 と、最終回に期待すること…実はアメリアは上記の思いについては12話で完結しちゃった感が。あとはゼルアメ要素ですね。ダブルラ・ティルトに期待。

★ポコタ
 ついに悲願のタフォーラシア復活を成し遂げたポコタ。ひとまず完結を迎えたポコタの物語。でも、もう一つ残っているのがレゾへの思い。これがどうなるのか、が最終回のポコタの見所。レゾを妄信するポコタ。彼が最後になすべき事は、レゾの中の「人の心」とそれによってタフォーラシアの悲劇が引き起こされたことを認めた上で、レゾを許すことなのかな、と思う。今更レゾを憎んだって何もならないことはデュクリスを通して感じていることでしょう。未熟で青臭だけど、それゆえの優しさは持っているポコタならそれが出来ると思う。自分が信じたレゾが、自分の肉体に宿ったまま滅ぼされる姿を見据えるのは辛いと思う。でも、そこをあえて見守って欲しい。

 と、テーマに即して、「人の心」に注目して最終回に期待することを書いてみました。…あんま期待しすぎると違ったときに凹むんだけど…でも、まあ、素直な期待、ということで。さあ、あと1話。最後の最後まで行こう!