スレイヤーズEVOLUTION-R DVDシリーズ完結に寄せて

 本日、スレイヤーズEVOLUTION-R DVD 5巻発売です。そしてDVDシリーズ完結です。ちょうど1年間のお祭期間となりましたね。と言いつつ、まだドラマCDがあるんですけどね。完結に寄せて、スレイヤーズEVOLUTION-Rのまとめ感想っぽいものを書こうと思います。本腰入れるとものすごく長くなってしまうし、まだ私の中で纏まりきっていない部分がある。という事で、今日のところは簡単に、纏まっている部分を。以下、ネタバレ。

スレイヤーズEVOLUTION-R Vol.5 [DVD]

スレイヤーズEVOLUTION-R Vol.5 [DVD]

 スレイヤーズEVOLUTION-Rは「大人になったスレイヤーズファンへ」、と視聴対象をごくごくピンポイントに絞って作られたシリーズだと思います。
 思えば、スレイヤーズREVOLUTIONはメイン対象は新規の若い層、でもオールドファン層へのフォローもする、という視聴対象を広く取って作られたシリーズだった。スレイヤーズをよく知らない人でもギャグ回は楽しんで見れた反面、ストーリーパートは説明不足になってしまっていて分かりにくかったようです(友人談)。そしてファンにしてみれば、それなりに楽しめたものの、スレイヤーズ初心者向けなので、どこか物足りないという思いがありました。対象を広くしすぎた故、どっちつかずになってしまったんですね。コンセプトとして見れば、ある意味狙い通りだったのかも知れませんが。
 EVOLUTION-Rでは新規層へのフォローが一切、といっても過言ではないくらいなくなり、完全にファン向けの作りとなりました。敷居が高くなってしまったという点では不親切、とも言えるかも知れません。でも、AT-Xという有料放送での放送であること、そのAT-Xで再放送があったことを考えれば、こういう作りはありだと思います。見るのはほぼファンに限られてきますからね。
 私はEVO-R1話を見たときに、「ファン向けの作りになったな」と思ったものの、一言で「ファン向け」と言い切るのはなんか違和感あるな、と思っていました。スレイヤーズのファンと言ってもいろんな種類、いろんな背景の人がいる。その全てのファンを包み込んで対象にしているか…?といえばNOかな、と思います。例えば「原作ファン」向けか?と考えると、確かに原作からのマニアックなネタを引っ張ってきていたり、2部に繋がるテーマを扱っていたりするけど、それでいてアニメオリジナルのノリである旧作のテイストは継続している。じゃあ、「アニメ版ファン」向けか?と言われると、アニメしか見ていない人には原作からのネタは分からないだろうし、更にはTVシリーズしか見ていない人にはナーマの正体もわからないかもしれない。原作と旧作アニメ(劇場版そ含む)を両方を見ている必要があるんですよね。対象年齢についても、AT-Xだから「大人向け」と一言に言い切れない部分がある。ダークな描写・重いテーマを扱いながらも、これまた旧作の低年齢層でも見れるように作られたノリを残しているパートもあって。
 ファン向けはファン向け、だけど、全ファンではなくて、そして間違いなくその対象の中に私は入っているような…と思いながら、どんなファン向けなのか?と悶々と考えたまま最終回を迎えて…霧が晴れたのは林原さんによる「JUST BEGUN」の曲紹介を聞いたときでした。
 「この曲を、ポコタとリナと、大人になったスレイヤーズファンに捧げたいと思います」
 …それだー!!
 そう…「大人になったスレイヤーズファン」向け、と言うのが、しっくり来る対象なのかなと。今のスレイヤーズファンの大半は、今は大人で、かつてアニメを見てファンになってその後に原作を読んでがっつりはまった、って人が多いと思うんですよ。原作とアニメを両方見ているという点ではまず合致する。そして、スレイヤーズへの特別な思い。青春時代をスレイヤーズと共に過ごし、アニメ版にはある種のノスタルジーを感じている。アニメ終了後、2部の重い展開に衝撃を受け、いつしか受け入れ、その裏側のテーマに涙する。…リアルでも山あり谷ありいろんなことがあって大人になっていった。だけど、どこか昔の…スレイヤーズを大好きだった頃の気持ちは忘れていなくて、この10年「再アニメ化」の日々を待ちわびていた…。って、私がそんな感じなんですが、当てはまる方多いんじゃないかな?
 旧アニメ版のテイストは残しつつも、原作からのネタやテーマを引っ張ってくる。視聴者の年齢が上がっていることを意識してダークな描写を入れたり、直接セリフにするのではなく、見ている側に感じ取らせる形でテーマを提示する。ノスタルジーと今の自分を感じる10年後のスレイヤーズだったのかな、なんて思いました。
 顕著なのが最終回。魔王が復活するというオマージュ。かつてと同じ状況ながらも、旅の中で絶望を知ったリナは変わっていた。生まれる迷い…それを振りほどくのがこれまた旅の中で得た仲間達だった。リナは後押しを受け、今一度重破斬を放つ。…「滅びなさい 魔王の亡霊」のセリフの後に瞬く光を見ていると、なんとも熱く・切ない思いがこみ上げてきます。うまく言えないけど、10年後だから、そしてかつてのスタッフさん達だから出来た最終回なんだな、と。そこにあるメッセージ、受け取りました。
 スレイヤーズEVOLUTION-R、個人的には100%絶賛、という訳じゃなくって、気になる部分もあります。だけど、それでも「大人になったスレイヤーズファンへ贈るスレイヤーズ」、楽しませていただきました。ピンポイントに絞った作りにしたのは正解だったんじゃないかな、と思っています。
 最後に…この記事の趣旨は、「スレイヤーズEVOLUTION-Rを楽しめないのはファンじゃない」ってことではないです。先にも書いたようにファンと言ってもいろんな形があるし、感じ方は人それぞれで、合う合わないはあると思います。誤解が生まれると申し訳ないので一応書いておきます。
 何はともあれ、もう一度言わせていただきます…スタッフ・キャストの皆さん、お疲れ様でした!