スレイヤーズEVOLUTION-R 第10話ネタバレ感想 補足

 10話ネタバレ感想の補足です。コメントのお返事が遅くなってしまっていて申し訳ございません。あと、これだけ先に書かせてください。以下、ネタバレ感想。


 「悲しみにくれる心を救えるものは何?自分で自分を追い込んで砕けた涙に染まっている」…砂時計、ほんと今作のエンディングテーマにぴったりですね。「『スレイヤーズらしい曲』としての作詞に悩んだ末の苦肉の策」、そう林原さんは言っていましたが…8話、そして10話を見た後だと、これ以上のものはないだろう、と思ってしまいます。
 そんな「悲しみにくれる心」に染まってしまったキャラクターが10話では3人。レゾ、ポコタ、そしてゼルガディス。レゾに関しては再登場する以上は単なる敵としてではなく、もう少し内面が掘り下げられるのかな?と思っていました。ドラゴンエイジでの林原さんコメントもありましたし。その辺は次回以降に注目ですね。今回クローズアップされたポコタと、特にゼルに関しては、ここまで掘り下げられるとは完全に予想外でした。
 ドラマガ1月号付録だったドラマCDでこんなやり取りがありました。
ゼル「俺はシリアスなどとうに捨てた男」
リナ「新シリーズではゼルのシリアス話があるらしいわよ」
ゼル「何っ、本当か!」
アメリア「よかったですね!ゼルガディスさん!」
 ゼル…喜んでいる場合ではなかった…orz。ゼルのシリアス話、私はてっきりコミック版1話にあった展開のことかと思っていました。コミック版のネタバレは避けますが…それ以上のシリアス展開があろうとは。
 まずは無印から14年の時を経て語られるゼルガディスの過去。これが意外なものだらけで見ている側を驚かせてくれた上に、ゼルのキャラクターに深みを与えてくれる、非常に興味深い内容に仕上がっていました。
 盗賊狩りをするゼルのアラビア風っぽいターバンは「スレイヤーズDX」に掲載されているあらいずみ先生画の「ゼルの素顔」イラストより、ですね。こういう小ネタを拾ってきてくれるところは本当に嬉しいです。そして、今とは違い、純粋で真っ直ぐなゼルガディスを演じ分ける緑川さんの演技も素晴らしいです。年齢は15歳くらい?もっと下かもしれない。
 そんなゼルはレゾのことを心の底から慕っていました。ゼルのレゾへの思いはキメラ化されてからの「恨み」の部分ばかりがずっと表に出ていて、その前はどんな思いを抱いていたのかはわかりませんでした。まさかここまで純粋にレゾを慕っていたとは…予想外でした。「強くなりたい!」その思いの出所も実は「レゾの力になりたいから」だった。健気です。しかし、その思いは裏切られてしまう。
 さらに意外だったのはゼルはキメラにされたことを一度は割り切ろうとしたことです。やっぱりゼルもポコタと同じ…例えキメラにされてもレゾのことを信じたかったんだろうな。だってあんなに慕っていたんだもの。でも、レゾに恨みを抱くきっかけとなる決定的な事件が起こる。キメラの実験の目撃と、聖人だと思っていたレゾが見せる人間的な醜さ。実験台にされたことを知ったゼルはここで裏切られたことを実感してしまう。そういえばゼルは5話で「このキメラの体も目を開かせるための実験の一つ」と言っていましたね。あの時は「あれ?レゾはゼルに力を与えるためにキメラにしたんじゃあ…?」と思いましたが…さりげない伏線でした。
 そして後半、レゾと対峙するゼルは、「キメラにされた体を戻す方法なんてない」という事実を突きつけられ、絶望する。このレゾのセリフの落としどころをどうするか…?は注目ポイントでしょうね。とりあえず、ラスボスになりそうなレゾとオリジナルキャラクターであるポコタについては、最終回までにキャラクターとして何らかの結末が用意されていると思う。ゼルもレゾへの愛憎の部分については決着がつくんだと思う。でもゼルガディスというキャラクターが背負うアイデンティティ…「元の体に戻す方法を探す」の部分がどうなるのか…?目標を失いかけているゼルガディス。今回のエピソードを終えた彼は再び旅に出ることが出来るのか?レゾの「元に戻る方法がない」発言へのフォローを考えてみる。

1.リナによるフォロー
 そもそもゼルが今の「元の体に戻る旅」を始めたのはリナとの出会いがきっかけになっていると思う。レゾへの復讐のために賢者の石を探してきたゼル。一歩間違えばコピーレゾやズーマのように、「復讐を遂げられなかった」という思いからリナへと牙をむいてしまう可能性もあったわけで。そうはならなかったのはリナの影響というのが大きいと思う。魔王が復活し、絶望的な状況で「勝つつもりで戦う」と仲間達を奮い立たせ、それを言葉だけではなく、実際に成し得て見せたリナの姿に色々と感じるものがあったのでしょう。復讐の旅から元の体を取り戻す旅へ…新しい旅を始めた。
 今回、幸か不幸かレゾにもう一度復讐する機会を得てしまったゼル。そして突きつけられた「元に戻る方法はない」という言葉。スタートラインに戻りそうなゼルをまた奮い立たせるのはやはりリナなのではないかな、と思う。
 原作のゼル外伝「ゼルガディス朧月草子」に描かれているゼルの姿…ひょっとしたらこれは今回の事件を終えて、さらに一皮剥けたゼルの姿なのかもしれない。製作者の魔道士から「戻る方法はない」、そう言われ、絶望から凶行に走るキメラの男にゼルは「そいつが元に戻る方法を知らず、それを研究しているものの存在を知らないからといって、その方法がないと決まったわけではない」と言う。この心境に至るもう一押しをリナがするのでは?と予想。

2.アメリアによるフォロー
 これは単純に愛の力wゼルアメ度が薄い今回。アメリアが何かを見せてくれるかも?という期待を込めてw

3.レゾによるフォロー
 レゾの今回の行動にはまだ読めない部分がある。ひょっとしたらゼルを絶望させるために言っただけで、実は嘘、という可能性もある。「私は知らないが、方法はあるかもしれない」そんな感じのセリフを言うのかも知れない。
 あるいは…大穴として実は知っていて、ゼルが元に戻る、という展開もありえるかも?神坂先生の中では「ゼルが元に戻る方法」は大分前から考えてあるみたいで。1998年刊行の「えんさいくろぺでぃあスレイヤーズ」の中でも「オフレコ」という形でインタビュアーさんには語っています。その後もファンクラブ会報の中で「考えてあるけど秘密」的なやり取りが何度か。なぜオフレコか…?それはいつか使う時が来るからでは?それが今!ってことで「スレイヤーズEVOLUTION-R」の中で明かされるのかもしれない。実際には戻らなくても、方法がわかる、とか。
 でも、これはかなり大穴ですね。ラジオドラマ版でもあったけど、ゼルは元の体に戻るとスレイヤーズ世界を卒業しちゃうんですよ。戦闘能力的にもついていけないし、「キメラにされた不幸な境遇」という要素がなくなり、キャラクターが立っていない状態になってしまう。今後スレイヤーズがどんな展開になるかはわからないけど、ゼルにキャラクターとしての結末を与えてしまうのは諸刃の刃かなあ、と。元に戻る方法知りたいけどさ…。ここは神坂先生が大切にしている「読者の想像の余地」の部分なのかなあ。出来上がった設定があるのであれば、あえて踏み込むのも面白いかも、とは思うけど…。
 ゼルにどんな未来が待っているのか…残り3話はその点にも注目です。いずれにせよ「ただ顔を上げて歩いていく」そんな道を選んでほしい、いや、選ぶと思う。

 次はポコタについて。ポコタはREVOLUTIONの頃から純粋でひたむき、思い込んだら一直線、同時にその裏返しとして未熟さ、青さも持つ、というキャラクターとして描かれています。レゾを純粋に信じてきたポコタ。裏切られたことを知ったポコタが取った行動は「信じない」でした。ゼルとポコタの対比は本当にうまく出来ていると思います。絶対だと信じて疑わなかった相手に裏切られたときに取る行動の両極端がゼルとポコタなんじゃないかな、と。ゼルのように「裏切った。許せない。」と恨みを抱くか、ポコタのように「そんなわけないよ。俺は信じない」と現実から目をそむけるか。…そうしないと自分を保てないから。現実世界だと時間がかかってもいいから、どこかで折り合いをつけて自分を納得させて生きていかなければいけないのですが、ポコタにはそんな時間はありそうにありません。あくまでレゾを信じることで自分を保ちたい、例え体をレゾに差し出しても…。
 オープニングを見ていると、「ポコタの体を依り代にしてレゾが復活する」は不可避のように感じます。ポコタには課題が残されている。REVOLUTIONの最終回で「何も出来なかった自分」を受け入れた彼。その経験を下敷きにして「じゃあ何をするのか?」の部分がキャラクターの延びしろとして残されているんですね。果たしてポコタの思いはどこへと向かうのでしょうか?レゾと向き合うことで、現実に立ち向かって欲しいです。
 でも、ポコタの決断がレゾを倒すきっかけ、という展開はできればNGで。最後はリナでお願いしたい。ここは個人的に譲れないのです。