文庫「DOORS 1 まぜこぜ修繕屋」ネタバレ感想
神坂一先生の新作DOORSの文庫第1巻が発売されました。各回の感想は雑誌連載時に書きました*1ので、省略して、本シリーズの全般の感想と言いますか、書評っぽいものを書いてみます。あくまで「ぽいもの」です。と、逃げ道を用意したところで、本文スタート。
- 作者: 神坂一,岸和田ロビン
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/08/31
- メディア: 文庫
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神坂先生の作品、とりわけギャグについては毎度「お約束を逆手に取ることによってそれを破壊し、笑いに変える」という手法がとられています。スレイヤーズは既存のファンタジー作品やら映画・マンガなどによくあるシーンのパロ*2。日帰りクエストは、異世界に召喚された少女が「こんな展開を待っていた」とガッツポーズ。闇の運命を背負うものでは、「前世の因縁から」という名目での戦いを受け入れない少年が主人公です。
DOORSではどんな「いい意味でのお約束破壊」が待っているのかな〜、と期待しながら読み始めました。・・・今回「破壊」してしまったのは大胆にも「常識」でした。常識とは何か?辞書で調べてみると・・・
>ある社会で、人々の間に広く承認され、当然もっているはずの知識や判断力。
Yahoo辞書 大辞林より
ってことらしい。つまり、その「人々の間に広く承認され当然もっているはずの知識や判断力」が、すっかり別のものに変わってしまえば、それが我々の世界ではどんなに奇異なものでも、その世界ではそれが常識になってしまうわけで・・・。実際の世界でも女子高生なんかの間で「どうしてこんな格好が?」ってメイクや服装が流行ったりしますよね。それも彼女らの間ではそれが「常識」になっちゃってるでしょう。
DOORSはそんな常識の脆さを巧みに突いたギャグなんでしょうね。しかも、その新常識が我々の理解を超えたカオスワールド。これは笑わずにはいられない。
この常識が破壊された世界で、唯一以前の常識を理解できる存在であるミヤの境遇って結構ハードだよな〜。ツッコミ役兼読者の視点を持った彼女の存在はこの物語の核になります。で、逆にリスの姿になってしまい、「珍常識」を語る妹のチサは、DOORS世界のカオスの象徴。この二人の主人公の役割分担は、うまい具合に機能してるのではないかと思います。
さて、このDOORSですが、面白さと同時に、常にトンデモカオスワールドを創造し続けなければならない、という危うさも見え隠れしています。実際、第1話など、カオスワールドのパワーが弱い回はパンチが今ひとつ。あとがきでの様子だと、そんなに長く続けるつもりはなさそうですが、その分凝縮した笑いを提供してくれることを期待します。伏線とか謎とか、この作品に関しては一切なしでOKなので、とにかく笑わせてください、神坂先生!
★追記
個人的に一番ツボったネタは触手なのですが、雑誌連載時にはあったイラストがカットされてしまったのは残念だな。さすがに刺激が強すぎて、小さい子供が熱出したりしたんだろうかw。