義仲版スレイヤーズコミックの路線変更について考える。

 5月に行ったスレイヤーズ語りチャットで、「義仲版コミックでリナ=魔王の欠片説がいつの間にか消えた」という話題が出ましたので、それについて考察してみました。
 まずは概要を・・・。義仲版コミックとは角川コミックスドラゴンジュニアとして刊行された義仲翔子さん作画の「超爆魔道伝 スレイヤーズ」のこと。全8巻でオリジナル展開を交えながら第1部のラストまで描かれています*1。参考画像としてコミックス1巻の表紙を→に*2。以下はネタバレ要素を含む内容なので、未読の方はご注意を。・・・ぶっちゃけ今回のお題そのものがネタバレのような気もするけど・・・まだ読んでない人、ごめんなさい、と一応謝っておく。

 さて、この義仲版、序盤では「リナが自分のことを魔王の欠片ではないかと疑っている」という描写があるものの、レゾ=シャブラニグドゥを倒した3巻以降、その設定はきれいさっぱり忘れられてしまいます。先のチャットでは「何らかの理由で路線変更があったのでは?」との話になりましたが、その後妄想した私の考えを書いてみます。路線変更の原因・・・それはアニメ版スレイヤーズのヒットなのでは?という気がする。
 もう少し詳しく義仲版スレイヤーズをおさらいしてみます。第1話はアニメ版が下敷きになったガウリイとの出会いの話。その後はしばらくお宝探しを主軸とした1話完結のオリジナルのストーリが続きます。ここでポイントなのは、コミック版オリジナルの要素として、「自分に関するとある疑問を解決する」というリナの旅の目的が設定されていること。このようなオリストがコミックス1巻分展開された後、原作1巻「スレイヤーズ!」のお話をベースにしたストーリに突入します。で、レゾ=シャブラニグドゥとの決戦の後、リナとレゾの精神世界での会話が挿入され、そこでどうやらリナの疑問が「自分が魔王の欠片の一つではないか?」と言うものであることが示唆されます。あくまで示唆されただけで、はっきり解明はされていません。ところが先に述べた通り、この3巻以降はこの疑問についてリナが口にするシーンは全くなくなってしまいます。4巻のRETURN編を経て、5巻からは死霊都市編として、アニメ無印の後半をベースにしたお話が始まり、それ以降はどちらかと言うとアニメ寄りの展開にシフトしていきます。
 義仲版コミックスが雑誌に掲載されたのは1995年の4月号〜。アニメの開始時期とほぼ同時です。思うに・・・連載当初は「原作ともアニメとも違う、第3のスレイヤーズとしてのコミック版」を目指していたんじゃないかな。ところが、アニメ版のヒットにより、アニメから原作やコミック版に入ってくる読者が増えた。そこで、この時流をコミック版でも生かそうと、義仲版の役割が「第3のスレイヤーズ」から「アニメのコミカライズ」に変更されることになったのでは・・・?現に4巻以降はオリジナルを含みつつも、アニメ寄りの展開になって行きます。そうなってくると、コミック版独自の設定は読者に混乱を与えるだけですので、カットせざるを得ない。こんな経緯を経て「リナ=魔王の欠片」の伏線はお蔵入りになってしまった・・・これが真相なんじゃないかなあ、と予想。あくまで予想。
 ここからはちょっと私の想像の世界になりますが、1巻収録の第5話「山越え 川越え 竜の谷」にご注目。「過去の知識の片鱗のみを与える」とされる「刻の魔道書」に触れたリナの周りに現れているイメージには、まだ出会っていないゼルやレゾ、そしてなぜか新コスチューム(TV版でおなじみのコス)を纏ったリナまでが登場しているのです。これらは、「未来」に当たるはずなのに、なぜ・・・??
 ひょっとしたら、このコミック版のリナは原作やアニメのリナとは違う存在なんじゃないか・・・、そんな風に感じられます。メディアが違うからキャラが違う、とかそういうのではなく、SFC版主人公のように、存在そのものが従来の「リナ」とは違う。例えば、原作リナの時代は実はコミック版においては過去のもので、コミック版主人公はその生まれ変わりである、とか・・・。同じ歴史を繰り返しちゃってるのは不自然かもしれませんが、何らかの要因で繰り返し世界に紛れ込んじゃったとか、そんなパラレルワールド的な展開が用意されていたのかも・・・、なんて妄想が思い浮かびました。
 このパラレル設定の正否はともかく、義仲版は序盤においては、独自の展開を目指していて、その為に「リナ=魔王の欠片説」を採用していた・・・、そんな風に感じます。願わくはこのオリジナル設定によるコミック版スレイヤーズも読んでみたかったのですが、今となってはもう無理でしょうねぇ・・・。

*1:途中スレイヤーズRETURNをコミカライズした章もあります

*2:1巻の表紙は何故か初版だけ2版以降と違います。これは初版Ver.