クロスカディア総括感想


 今日は先月の6巻(クロスカディア(6) 星メグル地ノ訪問者タチ (富士見ファンタジア文庫))にて完結を迎えたクロスカディア総括感想を書きます。

 全体を読んで思うのは「よくまとまっているけど、盛り上がりに欠ける」・・・そんな感想です。なんかキャラクターにしてもストーリーにしても、悪くはないけど今一歩はまりきれない。その原因を考えてみたとき、二つの要因に思い当たりました。

 まず一つ目は主人公シンがあまりにも無力ということ。シンは今までの神坂一作品の主人公と違い(日帰りのエリは除くとして)、
最初からハイパーに強い、というキャラクターではありません。1巻(月メグル地ノ来訪者タチ―クロスカディア〈1〉 (富士見ファンタジア文庫))では初めての実戦にビビリながらも、しだいに戦いのコツをつかんでいく様子が書かれています。シンはこれから強くなっていくキャラなのかな?と思いきや彼の戦闘面での活躍は4巻(風サワグ地の逃亡者タチ―クロスカディア〈4〉 (富士見ファンタジア文庫))で終わってしまう。5巻(クロスカディア〈5〉月眠ル地ノ反逆者タチ (富士見ファンタジア文庫))、6巻ではシンを超人間レベルにしていた
クランブレードを失い(敵もディーバじゃないし)、足止め程度の戦闘のみ。最終決戦の場ではただ理想論を騒ぎ立て、事態に流されるだけという結果になってしまう。

 もちろん戦闘能力が高い=強いということではないと思いますが、ヒロインを守る、という構図の展開である以上、ある程度の力が必要だったのではないでしょうか?逆に、弱いけど必死に戦う、というキャラクターでいくならあの無愛想で強気っていう性格は変えないと・・・。ちょっとシンというキャラクターに感情移入しきれませんでした。


 もう一つは・・・ヒロイン、メイが子供すぎる。これが大きかったと思います。まあ、お上の萌え路線に従った設定なのかもしれません。にしたってなー。謎の敵に追われて主人公に守られるってストーリーなんだぞ。主人公と恋に落ちんでどうする!シンとメイの間には恋愛感情、なんてものは想像もできません。メイのもう少し年齢あげて、恋愛感情まで行かなくても旅の中でシンがメイをだんだん意識し始めて・・・くらいの展開の方がベタだけどわかりやすい構図だったのでは?「メイを守る」という理由もはっきりするし。「家族」ではいまいち説得力に欠けたし、やっぱ感情として弱いですよ。男なら惚れた女のために身体張らなきゃ。と・・・言いたい放題言ってみる。

 そういや、メイって1巻だけキャラ違いますよね。クランブルの知識を披露したり、行動も少し理性的だったりとちょっと年齢上に見える。2巻以降ただの変な子供になってるけど。

 否定的な意見ばかり書いてしまいましたが、よかった部分もあります。個人的にこのシリーズのツボはラフラ・リフラを始めとするリワーダーの皆さん。ラフラ・リフラの片言しゃべり(しかも口ベタだからという理由)、犬の習性で主人(メイ)に服従しちゃったり、
PT内のランキングに拘ったりする性格は面白かった。その他、獣化時にはそれぞれの獣の特性を生かした戦い方をしていて華がありましたね。てか、私がアクション好きすぎるだけ・・・なのか?

 神坂先生は、現在新作を構想中ということですが、次はどんな作品になるのでしょう。やっぱり強い主人公がみたいなあ。