本編15巻でなぜリナはゼラス・ファランクスを発動できなかったのか?

 もうすぐ春コミ!スレイヤーズプチオンリーです。スレイヤーズ学会スペースでは考察本・学会誌第2弾を初頒布します!詳しくはリンク先を参照してください。
スレイヤーズ学会 学会誌2「Slayers Wisdom」
 プチオンリー参加記念、というわけで、ちょっと考察でも書いてみます。第1弾の時に懸案だった、「本編15巻でリナがゼラス・ファランクスを発動できなかった理由について」。第1弾の論文は学会サイトで公開中です!こちら参照。このリンク先にある前回の私の考察を前提に話を進めてみます。

 一応解説しますと、問題のシーンは本編15巻の224頁。最近神坂先生がリアルタイムで戦略を考えていたっぽいことが発覚して激熱なルーク=シャブラニグドゥを倒すために思考錯誤している場面の一幕ですね。
【「獣王牙操弾(ゼラス・ブリッド)っ!」
 獣王ゼラス=メタリオムの力を借りた術 
 (中略)
 その術をあたしは――イメージの中で五本に分裂させた。
 正確にいうなら、頭の中瞬時に思い描いた呪文にアレンジを加え、同時に映像イメージも想起する。
 呪文のアレンジ方法は簡単。
 一本の炎の槍を、多数の炎の矢に分裂させるのと要領は同じである。
 むろん、現実では、獣王操牙弾を分裂させることなど不可能である。
 だが魔力の濃いこの世界なら――
 しかし。
 生まれ出た光条は一本のみ。】
 正確に言うなら「獣王操牙弾の分裂に失敗」という状況。ですが、13巻でミルガズィアさんが「ゼラス・ファランクス」という獣王の術を借りたっぽい、光弾をいくつも打ち出す術をを使用している(13巻・227頁)ので…ここで、リナが使おうとしたのは「ゼラス・ファランクス」をヒントにした術で、その発動は失敗に終わった、と仮定します。
 学会誌第1弾に寄せた拙稿では、魔法の発動条件について考察しています。それを元に、いったい何が失敗の原因なのかを考えていきましょう。
1.魔力が足りなかった
 リナは、大気に魔力が満ちた世界であっても、ゼラス・ファランクスを発動させるに足る魔力を得られなかった…そう考えてしまうのが一番簡単な答えでしょう。
 竜族であるミルさんは、人間よりも巨大な魔力を有しており…その魔力がゼラス・ファランクスの発動の源だった。人間リナの魔力+大気に満ちた魔力<ミルさんの魔力 という仮説ですね。
 ただ、リナはこの後にシーンで神滅斬2刀という、猛烈に魔力が必要になりそうな魔法を使ってるんですよね。しかも魔王によれば、長時間の神滅斬の発動も可能なようなセリフもあり…。
 となると、必要魔力量は神滅斬(2刀)<ゼラス・ファランクスとなります。一見するとL様呪文より魔力が必要って…どうなの?と思いますが…そもそも、神滅斬ならリナは増幅が必要とはいえ、元の世界でも使用は可能。そして、…威力では神滅斬<重破斬なのに、必要な魔力の量は神滅斬<重破斬なんですよね。そう考えると、「使用される魔力の量は必ずしも威力には比例しない」と言えると思います。恐らくは、ゼラス・ファランクスは光を分裂させ、それを自在に操る、という部分に多くの魔力を必要とするのでしょう。そう考えれば、「魔力が足りず、ゼラス・ファランクスは発動しなかった」という仮説はあり得るんじゃないかと思います。

2.呪文が不適切だった
 これは上げ足取りのような感じになってしまいますが…力あることばが「獣王操牙弾」だったからダメだったんだ!「ゼラス・ファランクス」だったらうまくいってたよ!という説ですね。
 ただ、「力あることば」は「絶対それじゃなきゃダメ」というほど縛られたものではないようなんですよね。すぺしゃる設定だけど「心眼ボンバァ」で炸弾陣発動させた人いるし(すぺしゃる23「ブレイク・オブ・ディステニー」より。123頁)。
 それを思えば呪文(「力あることば)は関係ないかも…と思いつつ、3項目のイメージに関連しますが、「獣王操牙弾」と発したことで、イメージが引きずられてしまった、という可能性も。
 リナが例を挙げている「炎の槍」と「炎の矢」も「フレア・ランス」「フレア・アロー」と力あることばは分かれているわけだし…。あ、余談ですが、この解説を見るに、術の難易度は「炎の槍」<「炎の矢」なんですね。
 とまあ、第2説は少し強引かもですが…「リナはまだ動揺していて新呪文試すのに力あることばを言い間違え、それゆえうまく発動しなかった」説として挙げておきます。

3.イメージが不十分だった
 術の「イメージ」が正確ではなかった説。でも、例の箇所を見ると、【呪文のアレンジ方法は簡単】と、リナはかなりイメージに自信を持っている印象を受けます。なのに発動しなかった。ぶっつけ本番で使った術なので、何かしら足りない要素があったのかもしれません。拙稿後半で仮定したイメージに「意思の力」を乗せる過程がうまくいかなかったとか…。これも本人の趣味や趣向に影響されたのかもしれません。同じくぶっつけ本番の神滅斬2刀はうまくいったことを考えると、リナと神滅斬は相性がよさそうですね。
 3番目は「イメージ・トレーニングをしていない付け焼刃状態だったので、発動するかは相性次第だった」という説でまとめてみる。 
 さて、いろいろ考えてみましたが、1〜3のどれか一つが原因なのか、はたまた複合的な原因なのか…答えはあの魔力が満ちる空間の中…。