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コミック版 「スレイヤーズEVOLUTION-R」ネタバレ感想 前編

 ドラゴンエイジに連載されていたコミック版「スレイヤーズEVOLUTION-R」が単行本になりました。アニメとはまた別の展開が楽しめる「もう一つのスレイヤーズEVOLUTION-R」となっています。こちらはこちらで楽しめる内容になっていますので、アニメを見た方にもオススメです。
 という事で、以下ネタバレ。アニメ版の内容のネタバレも含みますのでOKの方のみ続きを読む、から。

スレイヤーズEVOLUTION-R (角川コミックス ドラゴンJr. 113-3)

スレイヤーズEVOLUTION-R (角川コミックス ドラゴンJr. 113-3)

 ほぼアニメ版のダイジェストであった(アレンジもありましたが)コミック版REVOLUTIONに対し、大幅に異なる展開を遂げたEVOLUTION-R。あとがきによると、「同じ内容を漫画でやっても読者はつまらないだろう」という憶測からかなりアレンジを加えた内容になったんだとか。敢えてアニメ版挑戦するスピリット、そしてまた違う形に纏め上げた手腕に乾杯です!氷樹先生の意図通り、もう一つのスレイヤーズEVOLUTION-R、楽しませていただきました。
 色々違うところはあるのですが大きく3点かな。
 まずは、雰囲気が全体的にクールであること。回数の関係もあってか、ギャグ回はなしでシリアス一辺倒。キャラクターの皆さんもクールです。作画の線が細いこともあり、空気感も全体的にクール。アニメ版の熱が篭った展開とはまた違った形で楽しむことができました。
 次に、アニメでは描かれなかった部分にスポットを当てたこと。詳しくは後述しますが、デュクリス再登場、ゼルアメ要素、レゾからゼルガディスへのメッセージ等など。その分削られてしまったエピソード・キャラクターもあるのですが、「同じ内容を漫画でやっても読者はつまらないだろう」というコンセプトに即した形だと思います。ファンの「ここをもっと見たい」に応えた形かな、と。
 三点目は、アニメ版のテーマであった「人が持つ二つの心」とそこから生まれる「迷い」という要素を削ったこと。アニメ版ではズーマが、レゾが、ポコタが、ゼルが、そしてリナが、己の願望と人の心の間で揺れ動き、迷うという、人間臭いドラマを織り成していて、とても見ごたえがあるのですが、どうしても分かりにくい部分もあって。コミック版は連載の長さの関係もあってか、その辺はばっさりカット。「迷い」という要素がなくなったため、シンプルで分かりやすい展開に仕上がっています。かといってドラマはないわけではなく、また別の形で魅せてくれました。ドラマの見せかたもクールな感じです。
 概要はこんな感じかな。以下は、キャラクターごとに具体的に見ていきましょう。

★デュクリス
 まずはこの人を挙げなくては。氷樹先生はスレイヤーズREVOLUTIONのあとがきで「スレイヤーズデュクリス始まるよ!」とコメントしていましたが、まさか本当になるとはw
 アニメ版のデュクリス関して、EVOLUTION-Rまで見終わった段階で思ったのは、彼も二つの心に翻弄された人物だったんだな、と言うことと、ポコタにとっては親友でポコタの未熟さとEVO-Rへの延びしろを思えばあのラストも一つの形だったかなと感じました。色々と描写不足だったとは思いますが。加えてアニメ版での再登場はさせるべきではなかったと思っていたし、しなくて正解だった、とも。異形の姿で国外追放、と言うのが彼の罪なので、タフォーラシアに関わる事は出来ないだろうな、なんて思っていたので。ポコタがデュクリスの本体の前で「本当はお前と来たかったぜ」と涙で別れを告げるシーンでフォローは充分だったかな、と。実際、アニメ版の展開の中で、デュクリス登場のタイミングと言うのはなかったですもの。ヴェゼンディ編は言わずもがなですし、まさか最終決戦にいきなり登場させるわけにも行かないし。でも、やはり原作のデュクリスを思うと、魅力あるキャラクターとして描ききれなかったことは残念にも思えました。
 コミック版ではそんなデュクリスに再登場と活躍の場が与えられました。REVOコミック版にも「デュクリス好きだったから」という理由で奥さんとお腹の子供がデュラム病で死んでしまうという過去のエピソードが追加されていました。デュクリスファンの氷樹先生としては、彼の出番をもう一度描きたかったんじゃないかな、なんて思いました。そのため(それだけではないと思うけど)ヴェゼンディ編はラドック護衛のエピソード、アベルの登場を削ることになりましたが、前述の通り、もう一つのスレイヤーズEVOLUTION-Rのコンセプトに合っていたのではないかと。
 コミック版デュクリスは、ザナッファー化が進み、デュクリスの自我は薄れながらも、「魔族やタフォーラシアを害するものを排除する」・・・言わば「正義」のザナッファーとなって登場します。ジョコンダザナッファーがあんなに欲望まみれになってしまったのは、最初に食った人間が悪かったのかも知れないですね。そんなデュクリスは最終決戦においてキーマンとなります。その力とフラグーンの力で魔王の瘴気を削る。なるほど、そう来ましたか!上手いです。これもまた無印終盤のオマージュ的な流れですね。あの時は敵だったザナッファーが味方になっているという。光の剣の剣士・・・ガウリイとの連携もなんとも感慨深いものが。デュクリスは自分の体ごとガウリイに魔王を貫かせる。「わかった・・・」と静かな瞳でデュクリスの決意に応えるガウリイも良。デュクリスは最期に奥さんに「お帰りなさい」と迎えられ・・・リナにタフォーラシアを託して命を落とす。タフォーラシアを襲った疫病、それによって失った大切な人・・・そんな悲しみと怒りからから彷徨い続けたデュクリスの魂は、最後の最後に救われたのかな・・・なんて。それが「死」によってしか得ることが出来なかったというのはなんとも・・・。となると・・・生き続けなければならないアニメ版デュクリスというのは「死より辛い裁き」なのかも知れない、なんていうことも思いました。
 デュクリスに関しては、コミック版で補完されたかな、と思います。まさに「スレイヤーズデュクリス」!

★ゼルガディス
 ゼルに関しては1話からいきなりリナ達を裏切る、という展開に度肝を抜かれました。やっぱ敵から味方になったキャラクターがもう一回訳ありっぽく寝返ってみるエピソード、って言うのはお約束だけど燃えるwゼルVSリナもかっこよかったです。1話はアニメより先行して見ていたので、アニメでもこの展開あるのかな、と思ってワクワクしていましたが結局なかったですね。「新シリーズにはゼルのシリアス話がある」と予告されていたので、てっきりこの裏切り展開のことかと思ってましたよ。蓋開けてみたら過去話やらレゾと向き合うエピソードなど、もっとすごいことになっていましたw裏切り劇の顛末に関しては、ズーマがあっさり壷をゼルに渡してしまったり、「壷一つにつき一人の魂を移し変える」冥王の壷にリナの魂を更に封印できるのか?・・・フリだったにしてもそのことを知っているリナに駆け引きが通用するのか?という疑問は残るなどなど、正直少々拍子抜けでした。レゾがゼルにさせたかったことなども含めて、この裏切り展開をもう少しうまく使えていたらもっと面白くなったかな、と。でも、連載回数の都合などもあったでしょうし、新シリーズ幕開けの「引き」としては充分だったのではないかと思います。
 さて、アニメ版ではゼルはレゾに「元の体に戻る方法など存在しない」と言われてしまうわけですが、このシーンはコミック版ではカット。逆にレゾの知識を得たポコタが協力者に名乗り出るという、元の体に戻る糸口を掴んだ形でのエンディングとなりました。
 実のところ、私はアニメ版のゼルが「元の体に戻るのを諦めた」という風には全く思っていませんでした。いや・・・このEVO-Rのエピソードのあとに原作の「ゼルガディス朧月草子」を読むと、ゼルの心境がぴったりはまるからさ・・・。「体を忌まわしく思わなくなった」とか製作者に「戻る方法がない」と言われて絶望した男に「そいつがないと言ったからないと決まったわけではない」と言ったり・・・。体は受け入れて、レゾも許して、一皮向けて心機一転、それでも元の体に戻る方法を探すゼルガディス、なのかなーと。
 でも、今回のEVOLUTION-Rの帯に林原さんが寄せた「ちょっと違うけどそこに救いが沢山ね」というコメント、DVD3巻に石田さんが寄せた「ようやく身体に諦めをつけていただけましたか?」というコメントを見るに…「諦め手放した思い出 悔やんで泣いたならそれでいい」なゼルなのか?なるほど・・・それも一つの道だと思う。自分の身体を受け入れて生きる・・・レゾには出来なかった道。ゼルはそれを継いで生きていく、と。その先の道も少し示されていますね。レゾから得た知識を元に人々を救う生き方・・・これもレゾの後を継ぐような生き方ですね。それは過去のゼルガディスが本来やりたかったこと。緑川さんがドラゴンエイジのインタビューで言っていた「そろそろ前向きになろうよ。その身体になったことでいいこともあったでしょう?」という言葉もゼルを後押ししているようで。まさに砂時計だなあ・・・「生れ落ちたその瞬間誰もが背負うもの 運命と呼ぶのなら 見届けるために歩いていく」・・・。
 まあ、実際はっきりと「諦めた」とは言っていないし、エンディングの何かを探すかのように旅を続けるゼルガディスの描写を見るに、どちらとも取れる形にしているのかな、とも思います。
 と、少し脱線しました。このエンディングの違いも林原さんの言う「救い」の一つになっているんでしょうね。戻れるのがゼル的には一番嬉しいでしょうから。

★アメリア
 今回、アニメ版のアメリアは「セイルーンの姫として成長したんだな」と思えるシーンが多く、セイルーンの将来を思うと頼もしくも、少し寂しくもあって。アニメアメリアの若干の幼さ・未熟さの部分というのは魅力の一つかな、と思っていたので。コミック版の方ではその辺にスポットが当たっていました。
 1話ではゼルの裏切りを知って心配して、リナに泣きつくアメリアが良い。と、リナファン視点の物言いになりますが、アメリア相手だと「ちょっとお姉さん」になるリナがいいんですよ。今回のアニメは前述の理由もあってその辺のシーンがなかったので、コミック版で補完されたのは嬉しいですね。
 傷ついたヴェゼンディの人々を癒すシーンも良かったです。リザレクションを広範囲にかけられるのか?というツッコミはさておきw
 そして、ゼルアメ要素もコミック版は強めですね。アニメだと7話くらいしかなかったような。

 今日はここで一旦切ります。残り半分くらいです。