スレイヤーズライト・マジック まとめの感想

 ライトマジック先に消化します。やはり旬なものを優先させた方がいい、とやっと気づいた。コミックス全2巻、絶賛発売中です。ネットでの感想を見ていても好評意見が多い本作。児童向け雑誌であるケロケロエース連載作品ですが、大人ファンでも楽しめる作品です。まだの方は是非読んでみてください。

スレイヤーズ ライト・マジック (1) (角川コミックス・エース 217-1)

スレイヤーズ ライト・マジック (1) (角川コミックス・エース 217-1)

スレイヤーズ ライト・マジック (2) (角川コミックス・エース 217-2)

スレイヤーズ ライト・マジック (2) (角川コミックス・エース 217-2)

 各話の感想は連載時に書きましたので、今回はまとめ雑感を。以下、ネタバレです。
 *過去の感想はこちらから。

 2巻目を読み終わって思った・・・「これは単にスレイヤーズを子供向けにしたマンガではなく、スレイヤーズを題材にした少年マンガなんだな。」と。もちろんいい意味で。一本の少年マンガとしても非常によく仕上がっている。基本の流れは「世界滅亡の危機を救うために奮闘するひたむきな少年ライトの成長の物語」という王道的なもの。そこにスレイヤーズ世界からリナとガウリイがやってきて、ライトの成長を助けていく。スレイヤーズの表の一面・・・クライマックスに戦闘が据えられている部分や、リナの「勝つつもりで戦う」といった精神論は少年マンガとの親和性があると思うんですよね。スレイヤーズファンとしてだけでなく、少年マンガ読みとしても熱く読むことができました。
 「表」と書いたのは「裏」があるからで・・・というのはここでは語りません。でも、ほんと、スレイヤーズって「全部入り」なんだな、とつくづく思う。一つの作品の中にいろんな要素が詰まっている。どこに特化するかで色々な味付けの「スレイヤーズ」が生まれていく。そもそも原作からしてすぺしゃると原作15巻が同じ世界観の中で描かれているんだからなあ。数々のメディアミックスが可能だったのもその辺の地力があるからではないかと。20年目にして児童書版・少年マンガ版と更なる広がりを見せたスレイヤーズ。次の一手は・・・少女マンガ版とかどうでしょうwできる要素が普通にあるんだからすごいわ。
 と、話は戻ってライトマジック。

機械文明が発達し「魔法」はおとぎ話でしか語られなくなった、そんな世界・・・
・・・だが今
人々の平和は「魔族」によっておびやかされていた!!!
人間の作った兵器では魔族を倒すことはできず 人間は追い詰められていた
(魔族に襲われる少年)
リナ「ファイヤーボール」
魔族を倒せるのは失われた力 魔法だけなのだ
リナ「何やってんのライト!あたしの弟子ならもっとシャッキリしなさいッ!」
ライト「ハ、ハイッ リナさん!!!」

スレイヤーズふゅ〜ちゃ〜(仮)
次号より大暴れ新連載!!!
コミックシナリオ/村松由二郎
マンガ/ささきしん
(リナとガウリイ、そしてライトの大きなイラスト)

リナ「ついでにこの世界のお宝もいただいちゃうぞッ」
ライト「暴れまわるってそっちの暴れるッスか!?」

 これが連載開始前に描かれた予告編マンガの内容。この予告編からここまでの名作が生まれることを予想できた人がいただろうか?最初は驚きましたよ。まさかファンタジー世界が舞台という概念まで取っ払ってしまうとは。しかも新主人公はリナの弟子の少年。でも、この思い切った設定がライトマジックの面白さの鍵を握っていたと思います。
 まずは新主人公のライトくん。読み手の対象年齢を下げる工夫として考えられる手法としては、主人公のリナの年齢を下げるという形があったと思います。実際にこの手を取ったのがアニメ無印と児童書版。アニメ無印リナは年齢設定は原作同様ながらも、精神面は原作よりも幼く描かれています。児童書版は年齢からして12歳という設定。でも、ライトマジックは別の方法を取った。リナの年齢は下げず、読者視点の少年キャラクターを別に用意し、彼を主人公にするというもの。ライトマジックは「少年マンガ」ですから、女の子であるリナを主人公にするよりも読者の共感を得やすいでしょう。実際ライトは「ひたむき・純粋・正義感が強い」と少年マンガの主人公としてはとてもプレーンで癖がなく、読者の共感を得やすいキャラクターだと思います。
 この大人の主人公*1の横に「読者視点キャラ」を配置するというのは少年マンガではよく使われる手法。思いつくところだとるろうに剣心の弥彦とかクレイモアのラキとか。あとは特撮ヒーローものとかでも周りに子供がいるような気がする。この手法の特徴として、大人主人公は「読者視点キャラ」のあこがれの対象としてかっこよく描かれる、という点があります*2。ライトマジックもその例に漏れず、ライトの師匠となったリナは基本的にものすごいかっこいいキャラクターとして描かれています。ギャグでは崩れますが。そんなかっこよく、ちょっとお姉さんなリナはスレイヤーズファンの視点から見ても頼もしく、見ていて惚れ惚れします。リナに憧れ、成長していくライトと、それを助けるかっこいいリナ。二人の主人公がお互いの魅力を引き出しあう相乗効果も生まれています。
 二人は役割分担がきっちりできています。戦闘担当はリナで、それを見据えながら毎回何かを決断して成長していくのがライト。ライトに呪文を覚えさせなかったのも正解だったと思います。役割分担の点からもなんですが、魔法を覚える過程というのは原作でもはっきりと描かれていないんですよね。ライトがリナに弟子入りする話、と聞いて「魔法を習うシーンという未開の分野を説得力を持たせる形で描けるか?」という点はちょっと心配だったのですが、そこにあえて踏み込まなかったのは正解かな、と。
 次に「未来風世界」という舞台。スレイヤーズ=ファンタジー世界が舞台という概念を大胆にも覆したこの設定。ケロケロエースという連載誌を考えれば、子供たちが好きそうなメカや機械的デザインの魔族を出したのは目を引く意味で効果的だったんじゃないかな、と思います。スレイヤーズファンとしても飛行機の翼に乗って飛ぶリナなど他では見られないコラボは面白かったです。
 スレイヤーズファン的に「未来風世界」で描かれた意義がもう2点。一つ目は最初にドーンと「未来風世界」という世界設定、そして主人公はライトということを最初に提示されたことで、最初から「外伝」ときっぱり割り切ってプレーンな気持ちで楽しめた、ということ*3。私はファン歴が長いもんで、良くも悪くも「私の中のスレイヤーズはこれだ」みたいな固定概念ができてしまっている部分があって。主に設定面とかキャラクター観の面とかかな。ライトマジックも例えば原作設定で考えたら「ありなのか?それはありなのか?」って思うところはパラパラある。だけど、その辺は一番最初にもう割り切っちゃったので、細かいところは気にせず楽しもう、という視点で読めました。もちろん「スレイヤーズ」として押さえるところをきちんと押さえてくれていたのも大きかったです。
 もう1点は、この未来風世界設定でスレイヤーズを強く感じさせる作品が生まれたことで、スレイヤーズというコンテンツの世界観が広がったこと。敢えて言い切ってしまうと、「スレイヤーズ=ファンタジー」に拘らなくてもいいんだ、と。あらいずみ先生がTRYのDVD-BOXのブックレットに描き下ろしていたイラストにもあった学園編とか、現代を舞台にしたものもやりようによっては可能なんだな、というのを強く感じました。神坂先生は原作世界観以外のスレイヤーズを書くことはないと思いますが、例えばコミック版企画がまた何かのきっかけで立ち上がったときに、また新しい世界観のスレイヤーズが生まれる・・・可能性があるかも。
 さて、この大胆な舞台設定の作品がなぜスレイヤーズを感じる作品に仕上がったのか・・・それはリナ・ガウリイ・ゼロスというスレイヤーズサイドから参戦したキャラクターの魅力を引き出したことが大きいのかな、と思います。
 リナは強く、かっこよく。パワーだけではなく時には頭脳プレイも見せる。それでいて奔放さの部分も描かれている。そこにライトマジック独自の魅力として「ちょっとお姉さん」という部分が加わっている。最後にライトの額にキスするシーンは思わずドキドキしちゃいましたよw
 ガウリイはボケ役で毎度笑いを提供してくれる。それでいて決めるところは決める!・・・だけど結局シリアスにはなりきれなかったりして・・・いい感じに場を和ませてくれていたと思います。ストリップショー吹いたw妙に色っぽいしw
 ゼロスはお馴染みの暗躍ぶりで「謎解き」を提供してくれました。結局「秘密です」で退場してしまって「計画」の真意はわからずじまいでしたが・・・ちょっと考察含めてまとめてみる。

・アグリッパの目的
 当初は人類の共通の敵「魔族」を召喚し、人間同士の争いを止めようとした。しかし、戦争は終わらず、人類の未来は破滅しかないと悟り、世界を無に返そうとする。しかし、戦争の中でクロノスシステムの一部である箱舟が本体から離脱してしまったため?力を出し切ることができず、カタート山脈に封印状態だった。そこで「魔族」を使い箱舟を取り戻して完全体に戻り、その後に世界を無に返そうとした。
・円卓
 アグリッパの手駒となった魔族のボス達の組織。箱舟を奪還すべく、部下の魔族を率いて箱舟を何度も襲撃してきていた。ゼロスから力を借りてパワーアップしていたようだ。円卓の魔族達はリナ達の世界とは別の世界から呼び出され、アグリッパの手駒に作り変えられたと思われる。
・ゼロス
 最初は平行世界のゼロスと思われたが、結局はリナ達の世界のゼロスが洗脳を受けていたことが判明。ゼロスを召喚・洗脳したのは恐らく封印されていたアグリッパ。円卓の魔族のブレーン兼補佐役としてリナ達世界のゼロスを召喚。ゼロスもまたアグリッパの手駒として作り変えられてしまい、円卓の魔族に力を貸していたが、あくまで彼らとは一歩距離を置く存在だった。ゼロスはライトがクロノスシステムを発動させたことにより記憶を取り戻し、「最初から仲間になった覚えはない」と円卓の魔族たちを瞬殺。その時「こちらにも計画がある」と発言。ライト世界にもゼロスに当たる存在がいたようで、その「ゼロス」と融合したことに得た知識をリナに伝え・・・「秘密です」のセリフと共に姿を消す。

 ・・・まとめてみたけど・・・「ゼロスの計画」は結局なんなのだろう・・・。洗脳解ける前の思わせぶりな行動は「アグリッパの手駒」としての行動で、本来の「ゼロスの計画」じゃないと思われる。具体的なものではなく、「獣王の部下として世界を滅ぼす」ってことかな?まあゼロスだし、「秘密です」ってことでw
 スレイヤーズキャラの参戦は3人だけかと思ったら、最終決戦にはゼルガディス・アメリア・シルフィールの3人も参戦!いやー、燃えましたよ。少ないながらも各キャラ持ち味を生かした活躍をしてくれました。ケロケロで読んでいた子供たちに「誰?」と思われなかったかが心配だけど、最後のサプライズファンサービス嬉しかったです。
 また、作者の佐々木心先生は子供の頃スレイヤーズアニメを見ていた世代だそうで、随所にスレイヤーズへのリスペクトが感じられるシーンがあるもの本作の魅力でした。ゼロスが記憶を取り戻すところなんてラーシャートおるwこのシーンがビジュアル化されるのって初じゃなかろうか?作画が原作イラストイメージに近いデザインなのも嬉しいですね。と、今見返すと戦闘シーンの躍動感すごいなあ。やはり少年マンガとしても完成度高いですよ。佐々木先生、素敵な作品をありがとうございました。そしてお疲れ様でした。
 最後に、コミックス描き下ろし部分の感想を。
 扉絵のライト君かっこいいですね。一つ何かをやり遂げた男の背中だなあ。
 カバー下はパラレルギャグ四コマwかわいいwリナの声が無印25話の魔法講座Ver.で再生されるわwガウリイ犬もええなあ。こんな展開にならなくてよかったね、ライト君w
 ライトマジック感想はあと1回「妄想編」というのを書く予定ですw

*1:リナは厳密には大人ではないですが

*2:「読者視点キャラ」の目がないところとか、ストーリーが進んで少年たちが成長すると苦悩も描かれますが。

*3:今1話感想を読み返すと、やっぱり「設定考察」とかやっちゃってる自分がいたw