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新装版スレイヤーズ15「デモン・スレイヤーズ」ネタバレ感想 その1

 EVOLUTION-R放送期間中お休みしていた新装版で振り返る原作2部語りを再開したいと思います。と、言ってもひとまずはこの15巻が最後になりますが。
 再開を機にまた一言。原作2部について、発売当初に読んで、今ひとつピンと来なかった方、時間を置いた今、是非もう一度読んでみてください。きっと何か感じるものがあると思います。私もそうでしたから。という事で、以下はネタバレ。

 えっと、この原作再読語りシリーズは、最初に発売当時の思い出みたいのを語ってましたね。15巻発売は2000年5月。ちょうど今から9年も前になるんですね・・・。過ぎてしまえば早いなあ。当時は4月の発売予定が5月の連休明けくらいまでずれ込んで「早く、早く〜」と毎日せかせか待っていたんですけどwうん、半月なんて今思えばたいした待ち時間じゃなかったね。
 「スレイヤーズはこの15巻で完結」と言う話は大分前から告知されていたんですが、当時は終わってしまう寂しさみたいなものはなかったです。早く読みたい気持ちが強かったのと、「終わる」という事実が半ば信じられなかったからかな。結果、終わる感じがしない終わり方でしたし、すぺしゃるは続いたし、その後も外伝とかスレイヤーズVSオーフェンとか関連企画はあったし、アニメも去年復活したし・・・やっぱり「終わりはしない」だったwと、思い出話はこんな感じかな。
 最初にこの15巻を読んだときは、冒頭にも書いたとおり、「今ひとつピンと来なかった」というのが正直なところでした。「1部の方が面白かったな」と、そう読後数年間は思っていました。ところが、いつしか2部の良さに気づき・・・今では、いつの間にか完全に逆転していて2部の方が好きです。もちろん1部も好きなんですが、何度も読み返したくなるのは2部の14巻、そして15巻なんです。
 最初にピンと来なかった理由は、私の中では割とはっきりしています。
 一つ目は「ルーク=魔王」という展開がファンに読まれてしまっていたこと。私は当時はあんまり予想とか先読みをせずに読んでいたのですが、ファンクラブ会報では「ルークが魔王なんじゃないか?」というツッコミが多かったようで、それは目にしていました。神坂先生もしれっと流していたけど、やっぱり気になっていたみたいで。15巻発売後に「ルーク=魔王という予想が『イラストの目が赤いから』という理由から導かれていたことがショックだった」というようなコメントをされていたのを覚えています。要するに、このファンの予想と言うのが、作中の伏線から導かれたものではなく所謂「うがった見方」から来る予想だったんですね。結果的にそれは的中してしまい、「やっぱりそうなのか」と思ってしまった。
 二つ目は、これも「ルーク=魔王」絡み・・・一度魔王と戦ったことがあるリナが、別口でまたでまた魔王と出会うこと、しかも、その魔王が、覇王の偶然に賭けた作戦で、偶然にリナが出会った仲間の中から見つかった・・・という展開が出来すぎに思えてしまった、という点。
 三つ目は二つ目にも挙げた覇王の作戦が、1部のフィブリゾの二重三重の罠に比べると、作中でもツッコミ入っている通り「お粗末な賭け」だったこと。これは「1部の方が面白かった」と思えた要因の中では一番大きいかな。
 四つ目は、1部が魔族の設定や異界黙示録、そして世界そのものであるL様の正体など、急速に世界観が広がっていったのに比べると、2部は「世界観の広がり」という要素が薄かったこと。
 これら4点が15巻を最初に読んだ時にあまりピンと来なくて、長らく「1部の方が面白かった」と思っていた理由かな、と思っています。
 でも、時間が経って、ストーリーを把握した上で読み返すと・・・1部とは別の2部の良さ、奥深さに気づいた。その上で読んでいくと、2部において神坂先生が描きたかったものと言うのは、上に挙げたものとは別のところにあって、そこに向かって収束していく構成というのは実にしっかりしているんだな、と思いました。
 まず・・・上の観点と言うのは主に「リナが魔族との戦いの中で、世界の秘密を知る」という1部のメインストーリーに着眼した上での見方なんですよね。確かにこの点においては1部の方がしっかりと描かれているし、その延長線上で考えるなら2部は物足りない。でも神坂先生が2部で描きたかったものはリナと魔族との戦いではないようです。2部で主として描かれているのは「人の心」。リナが旅の中で知るのは「人の心の脆さ、弱さ」であり、戦うのももまた「人の心の脆さ、弱さ」なんです。
 覇王はぶっちゃけ「魔王の腹心」という肩書きを背負った豪華なかませ犬。覇王との戦いを乗り越えたリナパーティの一員であるミリーナが、人間の欲望が渦巻くセレンティアの街でゾードという人間に殺されてしまい、その出来事がルークの心に闇を生み、魔王を解き放ってしまう・・・この展開のための前振りに過ぎない。だから、計画自体はお粗末なものでも構わない。覇王戦を描いたのはエンターテイメントとしての意味合いも強いと思います。
 ルークは人の心によって呼び覚まされた魔王。ある意味「人の弱さ・脆さ」の象徴のような存在。なぜそこに至ったのか、という過程も丁寧に描かれている。そして彼がリナの仲間であるという点は非常に重要です。リナが心のうちに生まれる葛藤を押し殺して戦い・・・倒したその後にも「痛み」を背負いながらも「明日を笑って生きてみせる」という選択をする・・・ここが一番伝えたかったテーマだと思うので。
 ルークは「自分の中に魔王なんていなくても世界を憎む気持ちは変わらない」と作中でも言っている通り、実は魔王ではなくてもテーマ自体は成立するんですよね。それでも敢えて魔王にしたのは、これもまたエンターテイメント性を高めるためだと思う。ラスボスはある程度強くないと、戦闘要素のあるお話としては盛り上がらないので・・・。そこに1巻の「竜破斬は魔王には効かない」という設定を持ってきて逆転の発想で当てはめてみせたのは見事としか言いようがないです。
 世界観の広がりについては、大きな部分については1部のラストで明かされた「L様が世界そのものだった」という事実を以ってある意味完結していると言えると思う。2部では出来上がった世界観の中で「人」を描いていく物語だったのかな、と思います。唯一世界観が広がった点は竜族・エルフ族の技術だと思う。この点も「人」との対比としての力としてのあり方で、人間の力が弱いものであることを際立たせる要素としての存在だったように思えます。
 エンターテイメント性に重きを置いた1部、テーマに重きを置いた2部、・・・方向性は若干違えどどちらも紛れもなくスレイヤーズ。どちらにもまた違った面白さに溢れていると思います。
 15巻語りなのに、初回は主に1部と2部の比較論で終わってしまいましたが・・・今日はこんなところで。