スレイヤーズEVOLUTION-R 11話ネタバレ感想補足

 毎度おなじみ、11話のネタバレ感想、補足編です。


★オゼルについて
 今回はオゼル集大成の回でした。まだ次回彼女が生み出された理由など、、明かされる秘密があるかもしれないので、総括するには一歩早いかも知れませんが、オゼルについて語りたいと思います。
 オゼルとレゾのやり取りを聞いていて、やっぱり今作は「人の二つの心」がテーマなんだなあ、と改めて思いました。このテーマに関してはじっくり焦点を絞り、わかりやすくかつ伝わりやすい構成になっているのはとても上手いと思います。「人の心」を描く上で、逆に心を持たない「人形」というオゼルのキャラクターは定番ではありますが、それを伝えるのに適したモチーフだったと思います。
 ここで、こないだ原作を読み返していて、オゼルの元になった…かもしれないキャラクターを再発見したのでご紹介。再発見と言うのは、このキャラのことを読み返すまですっかり忘れてましてwそれは「スレイヤーズすぺしゃる2 リトル・プリンセス」収録の「リトル・プリンセス2」に登場する人形遣いの魔道士ゴール。彼は精巧に作られた人形を魔道で遠隔操作するという術を使っていました。こいつを再発見したとき、あ、「スレイヤーズ世界にも人形遣いがいたんだな」となんか納得。オゼルは遠隔操作型ではありませんが「人形」というキャラクターの元はひょっとしたらこいつかも?
 そういえば、REVOLUTION9話のオゼルが人形だとわかるシーンでゼルが「と言うことは陰で操っている奴がいるってことか」と言うような発言をしていました。ゼルはまずは遠隔操作型の人形を思い浮かべたんでしょうね。すると、EVOLUTION-R6話でリナ達がオゼルが生きていたことに驚かなかった説明もつく。リナ達の中では最初はあくまで「操作されている人形」という認識だった。操り主が無事ならまた彼女が動き出していても不思議はない。ところが観察しているうちにどうやら誰かが操っているのではなく、自立型、しかも人ではなく、レゾに作られた存在らしい、ということに気づいた、と。まあ、なぜ神滅斬でぶっ刺されても無事だったのか、と言う謎は残るんだけど…そこはレゾマジック発動か。精神の本体が頭にあるからそこを壊さない限りはまた動ける、とか?うん、それで行こう。逆に一度動きが止まったのは、衝撃のようなものが伝わってショックで一時的に機能停止した、ということで。
 その設定面は若干疑問点があるオゼルですが、冒頭にも書いたとおり、「人の心」というテーマの体現者としてのあり方は非常に良かったです。
 オゼルが作られた経緯はまだはっきりせず、12話で多少明かされるかも知れませんが、恐らくはレゾが自身が抱いた「感情と善悪の価値観の間に揺れる人の心とは何なのか?」という疑問について研究するべく生み出した存在なのかな、と思います。「目が見えるようになりたい」という感情から悪の道に走りつつある、いや、この時点でも走っていたかもしれないレゾは、自分を突き動かしてしまう「心」というものが何なのか、知りたかったのかもしれません。11話の二人のやり取りを見るに、「壷の持ち主に仕え、壷を守る」という使命はレゾが壷に封印された後…もしくは壷を作った段階で与えられたものでしょう。レゾはなぜ「壷の持ち主に仕える」という命令も与えたのか?恐らくは人に仕えさせることで、オゼルに「人の心が何であるか?」を感じ取らせようとしたのでしょう。例えば単にダンジョンの奥で壷を守護させる、とかではオゼルが人の心を理解することはないでしょうし…。ズーマのような憎悪に駆られる存在に仕えさせたのも、人間の負の側面も見せたかったからなのかも。オゼルは壷を守り、持ち主に仕えながら、人間の真似をしたり、感情によって行動する人間を目の当たりにしながら、ずっと「人間とは何か」を考えてきた。レゾは自分が復活するべきなのか?にも迷いを抱いているようです。その判断をリナ達に託したかったようですが、オゼルにも託していたのかも知れない。
 レゾが語る「人は感情によって行動を決める」「それとは別に善悪という概念がある」という話はとても深く、そしてスレイヤーズの裏テーマに根ざした概念だと思う。今作に限ってみても、デュクリス、ズーマは感情を抑えきれず、道を踏み外してしまったキャラクター。恐らくレゾもでしょう。…というより長編に出てくる敵側人間キャラクターはみんなそうなんですね。EVOLUTION-Rの先のエピソードにいると思われるルークもそう。
 感情が悪いものなのか?というとそういうわけではない。「感情」の表の側面を描いたのがNEXTの終盤です。リナはフィブリゾによってガウリイを盾に世界を滅ぼすかもしれない力である重破斬を使うように強要される。客観的に、感情を入れずに考えれば、人一人(仲間もいたから数人としても)の命と、世界…そこに存在する多くの命とを、天秤にかけてどちらを選ぶべきなのか、残酷なようだけど答えは明白ですね。でも、リナが最後に選んだのは「ガウリイを助けたい」という「感情」…心だった。あの状況で世界が無事だったのは結果論で、ひょっとしたらあのまま滅んでいたかもしれない。でも、あのときのリナの選択が間違っていたとは思えない。もし、世界を選んでいたら、あの場でフィブリゾがリナを見逃したとしても、リナは一生後悔したと思う。人間は時には感情に従うことも必要だし、感情を無視して生きていくのは辛いもの、そう思う。
 ダークサイドに落ちてしまった人の例のように、逆に抑えなければいけない場面もあるんだけど、それはそれで難しい。人間であるがゆえに。感情と理性、二つのバランスを取って生きていくのが人間なのかな…そんなテーマを感じさせるレゾの言葉だったと思う。
 さて、オゼルが「人間について」を考え抜いて、行き着いたのが「自分の感情に従う」と言うものでした。「レゾに従うことが善」と言い切り、感情を持たずにレゾの命令や壷の持ち主との「契約」にのみ従って行動を決めていたオゼルは「レゾにもう一度会いたい」という自身の感情に従い、ポコタに「レゾ様を復活させてください」と頼む。「感情に従う」…それがレゾが求めていた答えなのか?はたまた正しいことなのかはわからない。でも、間違いなく人形であるオゼルが手にした「人の心」だったと思う。くしくもそれはリナが選んだ選択と同じだった。この流れも非常にうまい。「レゾ様を復活させてください」そう叫んで以降の木村はるかさんの演技がまた良かったです。一気に感情がわきあがってきた感じです。表情もそれを強調させていました。
 レゾとの再会を果たしたオゼルは、喜びもつかの間、なぜか機能停止してしまう。この理由も次回語られるかも知れませんが、ちょっと予想してみる。

1.壷を守る役目を終えたから
 タイミングとしてはありそうだけど、オゼルの作られた目的が壷より先にあったなら違うかな?

2.「人の心」を得たから
 目的を果たしたから停止、その2。
 1、2の場合は深読みしすぎかもしれないけど、オゼルが「レゾの復活を望む」ことが復活の鍵だったのかもしれない。

3.レゾの命令に背いたから
 レゾの意思に従って動いていたオゼル。最初から「レゾの命令に従わなければ停止する」ように作られていたのかも知れません。でも、「壷の持ち主」に仕えていたオゼルの行動にはある程度自己裁量による行動が認められていたようなので、これはないかな?

4.レゾが停止させた
 これが一番ありそう。オゼルはレゾの力で止められるように作られていた、とか。「役割を終えた」にも通じる理由です。「オゼル…ご苦労」と言いながら彼女を愛でていたレゾ。この先、自分が取る行動をオゼルには見せたくなかったのかも知れない。単に「用済みだから」も、レゾがダークサイド出してきたらありえそう。

 この辺は次回待ち。人の心を得ながらも、最後は人形として崩れ落ちる姿は切ないものを感じました。オゼルの停止と引き換えに復活した形になったレゾ。果たして彼は何を語るのか?

★ポコタについて
 ポコタって色々なキャラクターとの対比が成り立つキャラなんですよね。今回はオゼルとの対比が出てきました。感情を持っていなかったオゼルに対し、逆に感情の塊であるポコタ。「タフォーラシアを救いたい」「レゾに会いたい」この二つの思いゆえに、自分の肉体を犠牲にすることを決意し、レゾを復活させようと奔走する。その姿はオゼルにも影響を与えた。逆にこの「感情」部分は危うくて、思い込むあまり、周りが見えなくなっている部分もある。
 ポコタはREVOLUTIONのラストで何も出来なかった自分の弱さを認めて、そこから立ち上がろうとした。でも、やっぱり心の中にしこりとして残っていたんですね。何も出来なかったことは疫病に苦しむタフォーラシアの民を救うことが出来なかった頃から続いている。疫病を治す方法もなかなか見つけられなくて、見つかっても今度はレゾが見つからなくて。そうこうしているうちにデュクリスが胸のうちに湧き上がった怒りから暴走を始め、それを止めることも出来ず、裁くことも出来なかった。ザナッファーを倒すことも出来なかった。それゆえ「今度こそ何とかしなくては」という想いが強い。もう一つはレゾへの思い。裏切られているかもしれないと感づきつつも、それでも「会いたい」と願う。信頼を裏切られて壊れそうな自分の心を保つためというのも大きいのかもしれないですが、レゾが自分の目的のためにタフォーラシアを犠牲にしたのであれば、レゾの手でタフォーラシアを復活させることでそれを償って欲しいのかも知れない。未熟で青臭いけど、どこまでも真っ直ぐで純粋…それがポコタ。残り2話、恐らくレゾと戦うことになるでしょう。彼はもう一皮剥けることが出来るでしょうか?

★リナについて
 スレイヤーズにおいてリナが持っている役割の一つに「視聴者(読者)の視点」というものがあると思います。「視聴者(読者)の視点」は一人称小説である原作時点から持っている要素で、その意味合いは二つ。一つ目は「自分ではない誰かになる感覚」。リナの強さや破天荒な言動というのは、見ている側からすると憧れの対象になり、リナの視点で物語を楽しむことは、ある種の変身願望みたいなものを叶えてくれる。REVOLUTIONではこの面を強く押し出していたように感じます。
 もう一つは「視聴者が作中に入り込んだ時の自分としての存在」。表現わかりにくいな…。一つ目とは逆に、見ている側が自分という価値観を持ったまま作中に入り込んだ場合の自分の置き所といいますか。自分がリナとして作中の事件を体験した場合、どう思うかを考えながら見るようにすることで、物語に入りやすく、そしてテーマを伝えやすくしている。EVOLUTION-Rはこちらの役割が強いように感じます。
 今作のリナはREVOLUTIONに比べると圧倒的に自己を主張しないんですよ。ズーマ、ポコタ、ゼル、そしてオゼル。自分の感情をさらけ出す彼らに対し、自己の主張をぶつけることはしない。リナ自身も人の感情についてわからない部分があるから、どうするべきか迷っているから、彼らの意思を尊重したいから…リナにも色々な思いがあると思う。でも作り手の狙いどころとしては「見ている人に考えて欲しいから、何かを感じて欲しいから」だと思う。リナがはっきり言葉にしてしまったら、それが答えになってしまうから。原作でも使われている手法ですね。地の文の部分でリナの感情が溢れてくる場面は言葉少ななんですよ。そこを補いながら読むことで考えさせたり、共感を得やすくしている。
 そんなリナの立ち位置は好印象です。セリフは結果的に減ることになりますが、少ないセリフの中にもリナの複雑な心中が伝わってきます。それを支える林原さんの演技が素晴らしい。表情も。11話でも、ポコタを説得しようとしながらも、「リスク」と「心配」を前面に出し、ポコタが攻撃に転じてからもそこに対する文句などは言わず、ポコタの「タフォーラシアを救いたい」という決意を否定するようなことは言わない。
 ただ、このシーン、リナの迷い、そしてポコタの決意を際立たせる意味でも、事前に検討してつぶしておいておいて欲しかった事項がある。それは「壷を壊せばレゾの魂が滅んでタフォーラシアが復活するのでは?」という可能性。この抜け道がどうにも引っかかってしまう。レゾを信じるポコタがそれを望んでいないのははっきりしている。レゾの真意がはっきりしない以上、リナも壷を壊してしまうことには抵抗があるんじゃないか?というのはなんとなくわかる。でも、ポコタ説得のカードとして使えるんですよね。「こういうやり方は好きじゃないけど、レゾのためにあんたが肉体を失う必要はない」…そんな感じに話を持っていったりして。リナがポコタとレゾを天秤にかけたら、ポコタを取ると思うんだよね。当然ポコタもすぐには納得しないだろうけど、そこは交渉の余地あり。逆にこの「壷を壊す」という方法が使えないとしたら、二人のやり取りにもっと緊迫感が生まれます。「タフォーラシアを復活させるにはポコタ肉体を犠牲にする」という選択肢しかないのですから。
 つぶしておくとしたらやっぱ9話の最初に壷を手に入れた辺りかな。以下のようなやり取りがあればすっきりしたかも。壷を手に入れてどうすればいいのか?と悩んでいるリナのシーンの辺りで、

リナ「まあ、タフォーラシアを復活させるだけ、っていうなら『壷を壊す』って選択肢もあるわ。タフォーラシアの封印はレゾが死ねば解ける、って話だったんだし」
ポコタ「何言ってるんだ!そんなのダメに決まってるだろ!レゾはオレの恩人だぞ!」
アメリア「そうですよ。そんな乱暴な!」
リナ「だから、あくまで選択肢の話だってば。あたしだってレゾの魂がどうなっているのかもわかんないのにそんな手を使うつもりはないわ。ゼルの目的が叶わないし。…それに、この手はリスクが大きすぎるから慎重に考えないと。」
ガウリイ「リスク?」
リナ「そう。果たして本当に『レゾの魂が滅んだらタフォーラシアの封印が解けるのか?』ってことよ。そもそもレゾが魂だけになって壷に封印されてるっていうこの状態がイレギュラー。そんな状態で封印が持続しちゃっているのもイレギュラー、って可能性もあるわ。」
ガウリイ「ええと…」
リナ「つまり、封印の持続に壷の中のレゾの魂の存在が関係ないかも、ってこと。」
アメリア「まさか…ここまで来てそんなややこしいこと…。」
リナ「その可能性もゼロじゃないわ。検証するには壷を壊してみればいいんだけど、もし壊しちゃって、それでタフォーラシアが復活すればいいけど、復活しなかったときは…あたしたちは唯一の手掛かりを失うことになる。」
ポコタ「そうなったらタフォーラシアは…?」
ゼル「そこからまた封印を解く方法を探すのは至難の業だな。」
リナ「そ。だからこの方法は使わないほうがよさそうね。一番確実なのはレゾ本人に封印を解いてもらうこと。そのためにはレゾを復活させなきゃならないわけだけど…どうやって復活させればいいのやら…」

 以下、オゼルがレゾの復活方法を知っている、という流れに続く。こんな感じで9話時点で「壷を壊すという選択肢」をつぶしておけばもっとすっきりしたと思う。まあ、「壷を壊してほんとにタフォーラシアが復活するのかわからない。試してみるわけにも行かない」という可能性をリナは頭の中で検討していて、それゆえにあのシーンで悩んでいたとの脳内保管もできるのでw私の中では「壷を壊す選択肢=リスクが大きい」ということでないものとして考えますw
 ポコタの決意とオゼルの純粋な意思に反対しきることが出来ず、リナはレゾの復活を容認することになる。復活に望むポコタを見守るリナの表情がまたよくて。腹くくりましたね。復活のリスクに対して、もう次の手を画策しているような感じ。レゾはリナに語りかける「久しぶりだな…リナ=インバース」と。レゾはリナに何を語るのか?