読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

スレイヤーズ14セレンティアの憎悪 ネタバレ感想 その2

 14巻更新第2弾、今日はルークとミリーナの話を中心に。


 ルークとミリーナ・・・この二人は2部開始当初からその身に悲劇が訪れることが決まっていたそうです。ファンクラブ会報で語られた事実ですが、更にショックを受けつつも、神坂先生のストーリーテラーとしての力量に脱帽してしまう。13巻まで読んでいく中でミリーナが死に、ルークが暴走するという展開はまったく予想できなかったんですよね。それでいて後から読み返すと、そこにいたるまでの地固めがちゃんと出来ていたり、それを匂わすようなシーンがあったりする。展開を暈すために、雑誌のインタビューやあとがきであえて嘘をついたりもしている。あとがきの嘘については新装版でカミングアウトしている通り。雑誌の方は、スレイヤーズ10周年特集(14巻発売前)の時、キャラクターの未来を語る、という特集がありまして、そこでルークとミリーナについても触れられていました。これもファンクラブ会報で「あのタイミングで本当の事を言うわけにはいかなかったので、『私時々嘘つきます』ということでコメントした」とあえて嘘をついたことを認めている。今手元にぱっと出ないので記憶頼りになりますが、
「ルークとミリーナを最初からコンビで出したのは、リナとガウリイがコンビを組むから残り二人がコンビを組むのが自然なように。」
 と言うような話をしていたと思う。・・・何というミスリード・・・最初からコンビであることに大きな意味があったんだよ・・・。
 ミリーナに一方的に愛をアピールするルークと、それを冷たく突き放すミリーナという構図はキャラクター付けの一環なのかと思ってました。ルークのミリーナへの想いは常にコミカルに描かれていましたし。でも、この要素は2部を書く上では絶対に必要なことだったんですよね。恋人同士、ではなく想い合いつつもあくまで「旅の相棒」なのも重要。リナとガウリイの境遇に似ていることで、自分たちの身に置き換えて共感できる作りになっている。
 悲劇の運命が決められていたルークとミリーナの二人。物語はそこに向かって少しずつ動いていく。残酷なようだけど、ルークとミリーナはその悲劇を以ってキャラクターが確立しました。でも、その儚さ、切なさや、彼らの心の中にあるテーマがとてもよくて、私たちの心を打ちます。
 ミリーナは人の手によって儚く、そして理不尽に命を奪われてしまう。一般的に仲間キャラの死ぬシーンと言えば、ドラマチックに盛り上がる場面として描かれることが多いです。でも、ミリーナの死のシーンはとてもあっさりと描かれています。思わず本当に死んでしまったのか?と前後を読み返してしまったほど。彼女の死は・・・あえて言ってしまうと、あくまでスレイヤーズ2部のテーマの通過点に過ぎないんですね。テーマのうち、「人は簡単に死んでしまうけど」の部分。ミリーナは感情を表に出さないキャラクターで、死の直前のシーンでもリナたちの前では物静かなまま(ルークと二人になった後のシーンでどんな様子だったのかはわかりませんが)。そんなミリーナのキャラクターは、死のシーンの儚さを際立たせている。
 ミリーナを愛していたルークは、その死を受け入れることが出来ず、復讐に駆り立てられていきます。まずはミリーナを殺した張本人のゾード達を憎み、次はゾードを雇っていたフランシス、その次はミリーナの治療を拒んだライアン、そして、ミリーナを助けることが出来なかったケレスへ・・・と憎しみがどんどん膨れ上がっていく。エスカレートしていく復讐が間違っているとわかりつつも止まれない。その一方で、気を許した仲間であるリナとガウリイの二人に自分を止めて欲しいと願う。このルークが暴走していく過程はとても丁寧に描かれます。9巻から13巻までの間もこの展開のためにあると言っても過言ではないくらい。ルークの今までの姿を知っているから、そしてその身に起きた衝撃に同情できるから、読んでいて何でこうなってしまったのか?という理不尽さとやるせなさが溢れてくる。結局、ルークの憎悪と悲しみは癒えることなく、彼は姿を消す。そして、物語は最終巻へと向かう。
 最後に、ガウリイの話をしておきましょう。14巻でもガウリイはリナを支える存在として大きな役割を果たします。二人の間では基本的に考えるのはリナの仕事。ガウリイは本人は「何にも考えてないだけで」とは言いつつも、その裏にはリナの判断への信頼があるからこそ、何も考えずにリナについて行くことが出来る。だけど、リナが迷ったとき、弱ったときは自分が前に出て道を示す・・・それがガウリイの2部における立ち位置、って話はここでも何回も書いてますが。14巻でも憎悪のルークを目の前にして思わぬ脆さを見せるリナを力づけ、道を示しました。やっぱりガウリイ、いい仕事をします。
 最後のミリーナの墓前のシーンでは、色々と話題を転換しようとしてますが、落ち込んでいるリナを気遣って、雰囲気を盛り上げようとしてるのかな、とか思ったり。まあ、ああいう解説を求めるのはガウリイの作品内でのもう一つの仕事でもあるので、そこまで想定されていないかもしれませんが。でも、結局リナは言葉少なく応えるだけで、もごもご口ごもってしまうガウリイもまたかわいくていいんだ。
 と、この辺で14巻語りは終わります。次は15巻。ひょっとしたらだいぶ先・・・ER終わってからになるかもしれません。まだイメージまとまっていないので・・・。