新装版スレイヤーズ11 クリムゾンの妄執 ネタバレ感想 2

 クリムゾンネタバレ感想第2弾です。今日はこのお話独自の魅力とあとがきのネタバレ感想を。

 今回、読み返して思ったのは、リナとガウリイの魅力ががっつり堪能できる話だなあ、ってこと。レギュラーキャラで登場するのは久々に二人のみ。アトラスの魔道士以来、かな。その代わりにゲストキャラがパーティに加わります。
 まずは依頼人でもあるアリア。普通の魔道士の女の子です。性格はちょっと気弱なところもありつつも芯は強い。魔道士としては駆け出しというか、一応術は使えるけど実戦経験がないために使いどころがわからない、と、戦力としてみるなら心もとない感じ。読んでいて親近感が持てるタイプだな、と思いました。私はスレイヤーズを読むときは基本リナ視点で読んでいくんですが(一人称なんだから自然と言えば自然)、ふと視点を変えるとまた見えてくるものもあって。アリアは読者視点の、スレイヤーズでは珍しい等身大のキャラなんだなあ、と。彼女の視点を踏まえてリナを見ると、リナがよりいっそうかっこよく見えてくるんですよ。アリアは年齢的にはリナと同じくらい。だけど、場数の違いが戦闘時の立ち回りに大きく表れてきている。アリアが「実戦経験がない」という話は何度も強調されて出てくる。リナとアリアでは魔力の量や魔法の知識、とっさの機転の有無など、持っているスペックも違うと思う。でも、経験値の違いと言うのはとても大きくて、それがリナの魅力のバックボーンを支える一つの要素なんだな、とすごく感じました。自分の力で何かを成し遂げてきた人間と言うのは自信に溢れていて、強い。そしてそこから生まれる余裕が、他者を気遣う力になるんだな、と。リナと、そしてガウリイも、何度もアリアにフォローを入れます。でも、それでいてリナは決して慢心したりしないんですよ。「リナでいいわよ」って言ってみたり(結局最後までアリアは「リナさん」だったけど)、役に立てずに「すみません」と言うアリアに「謝ることないって」と返してみたり。普段はやりたい放題やってるリナだけど、なんだかんだで懐深いよな、としみじみ思ってしまいましたよ。
 アリアの話に戻ります。アリアはリナたちとの旅の中で、急激に成長していきます。実践経験不足が顕著だったアリアは、ディラールの死をきっかけに一気に吹っ切れる。リナの戦略を真似て「こいつの悪いところまで真似すると人生踏み外すからな」とガウリイにツッコミ入れられたりもする。そして、最後に彼女が見せる決断というのがなんとも切なく・・・。
 さて、余談ですが、この「実践で戦えるようになるにはある種の吹っ切りが必要」というお話は、クロスカディアで詳しく描かれることになります。クロスカディアの主人公・シンの原型はひょっとしたらアリアなのかも?
 もう一人のゲストキャラ、ディラール。彼はリナたちレベルには及ばないものの、魔道士としてはそこそこ腕の立つランクなんじゃないかな、と思う。ガウリイと作戦打ち合わせて実行したりしてますし。彼は軽いノリの性格のナンパ男なわけですが・・・後々考えるとこの性格は死亡フラグだよな・・・。中盤戦であまりにあっけなく命を落としてしまうディラールですが、そのあっけなさはあとがきで語られている第2部のテーマに直結する部分で、重要なキャラクターであったことが伺える。
 ゲスト語りでだいぶ長くなりましたが、ようやくメイン二人。ガウリイから行きましょうか。クリムゾンのガウリイは地味に大活躍しているんですよ。この「地味」って言うのは決して悪い意味じゃない。あえて裏方に回り、リナのサポートに徹する姿は本当にかっこいいと思う。まず、クリムゾンに行くことを決めたのはリナの判断。リナとアリアがやり取りをしている間、ガウリイは何も自分の意見を言わない。・・・何も考えてないだけ、にも見えるけど、それはリナへの信頼の現われなんです。こういう交渉や判断はリナがやる、自分はそれについていってサポートすればいい、ってわかってるんだと思う。リナの方も無茶できるのはガウリイのサポートあってのこと。その後も戦闘シーンではバリバリ活躍するガウリイだけど、セリフ自体は割と少なめ。でも、その少ないセリフが全部味があるというかなんと言うか・・・。リナへのツッコミだったりはたまたボケだったり。この辺の掛け合いも二人の信頼を映しているようでとてもいい。そして・・・必要なときに自分の意見を言ってリナをフォローをする姿が最高にかっこいい。必要なとき、っていうのはズバリ、リナが弱ったとき、困ったとき。以下、独断と偏見によるガウリイ名セリフ集。

(敵の攻撃を弾きつつ)「リナ!オレを先に下ろせ!」
(「お、下ろせって・・・」と戸惑うリナに)「いいから!」

「・・・なあ、それでもそろそろ一眠りしたほうがいいんじゃないか」
「とりあえず体力と気力たくわえなくちゃな。―明日、つけるつもりだろ? 決着」

「とりあえず―外に出てみる。お前たちはここにいろよ」

「元気出せって・・・その重さ・・・半分はオレが背負ってやるから・・・」

 ガウリイ・・・絶妙のタイミングで絶妙なセリフを言うのよね。いい男です。2部ガウリイは、ハードな展開にあわせてリナにとって精神的な支えになっていくところが大きな魅力です。

 クリムゾン語りはまだ続きます。今日で終わるかと思ったらまた長くなってしまいました・・・。