アビスゲート2 深きを夢見る淵の王 ネタバレ感想

 アビス2巻の感想も行きます。

 一言で言うならば「巧い」。そんな作品。今回2巻目ですが、ものすごく丁寧に伏線が回収されていきます。特に、ドラゴンマガジン掲載の短編からの伏線が生きてきていることに気がついたときは「やられた」と思った。短編はクラウスたちがエイミイの護衛を引き受けた後、あちこち海について調査をしている時のお話。今回の文庫で言うと47ページの「一同が護衛調査の依頼を受けてからしばしの時が経っていた」、この「しばしの時」の時間軸が短編だと思われる。内容については文庫のみの方も多いと思うので深くは触れませんが、ほんとうまい具合につながってる。ストーリー的には短編読んでなくてもまったく問題ないけど、短編はパズルのピースにあたる感じ。こうなってくるとスレイヤーズアニメ化の影響で短編連載がストップしてしまったのはとても残念。やっぱ、両方同時はきついのかなあ…。今回、クラウスの弟リオネルがアビスフォームとして登場します。個人的にこの登場は少し唐突に感じたんですよね。でも、この弟、ひょっとしたら短編の方に先に顔見せする予定だったのでは…?と深読みしてしまいました。アビスゲートを調査しているクラウスの姿を以前に見かけるシーンかなにかがあって、今回の再会とネタばらしの伏線になるようなエピソードがあったけど、諸般の事情で長編の方が先に出てしまった、とか?なんというか、繰り返しになっちゃうけど、他のシーンはうまく繋がっているのに、この弟登場だけが唐突に感じられてならないんですよね。
 と、短編のとの絡みの話ばかりをしてしまいましたが、長編の内容の話に移ります。少しずつ明かされるアビスゲートの謎。一番大きな事実としては「呑まれた人間はアビスフォームに生まれ変わり、それを受け入れて生きる」ということでしょう。で、かつて王都がまるごと海に呑まれたと言うリリシェイド王国…その紋章を持ったパッセンジャー。冒頭に出てくる王はリリシェイドの王…もしくはその末裔なのかな?で、地上に残ったリリシェイド王国の生き残り達に何らかの方法で連絡を取り、人間を海に呑ませるべく活動しているのがパッセンジャー…みたいな流れか?でも、まだまだ序盤の2巻で「アビスフォームは元人間」という事実が明かされたことを考えると、もっと大きな真実が隠されているかも…神坂先生だし。そのパッセンジャーですが、あちこちに海を召喚、なんてことやってる割にテーニア達は仲間思いで人間臭さ溢れる連中ですね。仲間思いの敵、というと、いざ負けてしまうとボスから見捨てられてしまう…なんていうのが定石ですが、彼女達はどうなるやら。
 しかし、今回、色んな謎が明かされてきた割に、アリサについては謎が多いままですね。クラウスが「あいつになら殺されてもいいか」なんて思うシーンがある辺り、あまり描写がないだけで、信頼関係は深まってそうですが。彼女の存在もキーポイントの一つ?
 3巻以降も楽しみです。そして…短編が文庫化するのはいつになるのだろう…?そもそも三話以降も続くんだろうか…?