「DOORS II 新たなる敵を修繕せよ」ネタバレ感想

 2巻目にして完結巻。まずは一言。この度は惜しい作品を亡くしまして…。いや、本当にもう少しこのトンデモワールドのお話を読みたかったな。一話で一つ(もしくはそれ以上)の世界観を消費してしまうので、クオリティを維持するにはあまり長くは続けられない形態の作品だとは思っていましたが、全2巻は短かったなあ。せめてもう1巻くらいは読みたかった。でも、作者的には「予定通り、むしろ長く続いた方」だそうで、思い残すところはない様に思える。そんなこんなで以下ネタバレ感想行ってみます。

 雑誌掲載分は、その時に書いた感想にリンクを張っておきますのでよかったらそちらも読んでください。当時の感想なので、読み返して感想変わった部分もあったりしますが。
 第5の扉第6の扉第7の扉最後の扉
 
★第8の扉「変身魔法少女を修繕せよ」
 「第7の扉」で名前だけ出た「アスモデウス・ミヤ」を膨らませたお話。…魔法少女は18禁wスレイヤーズでは魔法少女パロとして「魔法の老女プリンシア」というお話がありますが、DOORSでは違う方向にパロに行ってますwミヤがネットで検索してるシーン吹いた。結局変身はしなかったけど、それが正しい選択だろうな…。ミヤ的にも作者的にも。あくまで「なんかやばそう」で終わるところが良い。あと、正体ばれちゃいけない理由が「身内の恥だから」って見も蓋もなさ過ぎるw「正体がばれるとペナルティがある」という魔法少女モノお約束のパロですね。このパロがいかにも神坂先生らしくって好きです。
 この回のもう一つのテーマは「空気を読もう」。ファンタジー世界だからSFの力は使っちゃいけないらしいw空気を読んで爆発するプロフェッサーM改め松二も素敵だw

 さて、以下はほんとにネタバレのネタバレで総括。冒頭で短すぎて残念という話を書きましたが、短いシリーズだからこその起承転結、そしてテーマがはっきりしていたように感じます。「起」は1話のことの起こり。「承」は触手や妹文明でお話の方向性が見えてきた辺り。この辺までが1巻。
 この2巻では、リス化してしまった妹チサ視点の話が出てきます。チサはリスのしっぽが減っていったり、触手になったり人間に戻ってみたり、と修繕が進む度に姿を変えていきます。この変わってしまう不安、と言うのは姉のミヤが抱えている「世界が普通じゃなくなってしまった恐怖」と近いものがありますね。チサの状況は我々の普通の感覚で考えたら明らかに異常なわけだけど、それが普通になっているチサにしてみれば変わることこそ「普通じゃない」。それを感じさせたチサ編。そんな不安からチサは修繕を止めようと言う。この辺りが「転」にあたる部分でしょうか。結局はシュリンとの怪談対決に破れたチサは、修繕を進めることに同意するわけだけれど。
 そう考えるとプロフェッサーM編は…転と結の間にある話になっちゃうんですが…いわばてこ入れ?新しい話になりそうだったけど、結局そのまま終結してしまったよ。
 そして「結」のオチ。実は人間(妹)だったレンチ。女(姉)だったシュリン。唐突なように感じましたが、実は今までレンチが接触してきた人ってみんな妹(と明言はなくても女性)だったんですよね*1。某2chで見て初めて気がついたよ。1巻のあとがきで作者は「突然何の脈略も伏線もなく『完』とかやるかも知れない」なんて言ってましたが、ちゃんと伏線張ってたじゃないか。こんなはちゃめちゃ設定&ギャグオンリーな作品にちゃんと伏線が張ってあったとは…さすが一筋縄ではいかないぜ。あとがきすらもミスリードだもんな。
 2巻のあとがきによるとテーマは「普通って大事だよな」ってことだそうです。よーくわかった。妹が触手なんて、そんな「普通」嫌過ぎます。いや、真面目な話、「普通なんて面白く思えないよ」というチサに「面白くないならどうしたら面白くなるのか、自分で考えて行動しないと」答えるミヤのセリフは神坂先生の作品らしくていいかな、と読み返して思ったよ。
 こう考えると、DOORS、短いながらも綺麗に纏まった作品でしたね。次回作に期待しています。…その前にアビスゲートかな。

*1:最終話によると「それぞれの世界でレンチにあたる人に接触する」ことが修繕の方法だったそうです