劇場版スレイヤーズの系譜

 スレイヤーズイッキミNIGHT応援企画!イベントには参加できなくて残念ですが、思いのたけをレビューという形でぶつけてみます。実際の映画内容、当時のムック本等に掲載された製作者インタビューなどを元に私個人の感想を交えてつれづれと書きます。
 1995年〜1998年の4年間、4作品製作された劇場版スレイヤーズ。この4部作は常に前作の足りない部分、もっと見たかった部分が次回作へ反映される形で進化をしていたように思えるのです。

★劇場版スレイヤーズ

 記念すべき第1作目は、総監督のやまざきかずおさんによるオリジナル脚本を元に作られた作品。前半、掛け合いによるスレイヤーズ独特のギャグが展開するものの、全体的にシリアス且つ幻想的なイメージで、各方面でメディアミックスされた「スレイヤーズ」という作品群の中ではちょっと異色作の様に感じます。しかしながら、その幻想的な雰囲気や、起承転結のはっきりしたストーリーは、一本のファンタジー作品映画として捉えた場合、非常によく纏まった出来栄えだと思います。当時はまだシリーズ化なんて決まっていなかったろうし、原作を全く知らずに見る視聴者も多いであろうことを考えると「一本の映画として見られるものに纏める」という選択肢は正しかったのではないでしょうか。
 ちなみに、オリジナルキャラであるガウリイのご先祖・ラウディは、初期のアイデアではガウリイの少年時代という設定だったそうです。なんでも「オリジナル脚本だけど原作と繋がる部分が欲しかった」とか(DVD-BOXのブックレットより)。確かにラウディがリナに対して「これはお前さんにも関係あることなんじゃ」と言うシーンには、本編との繋がりを感じて鳥肌が立ったものです。原作やTV版を知っている人へのメッセージですね。でも、ガウリイ本人にしなかったのは正解ですね。さすがにそこまでやっちゃうと原作とつじつまが合わなくなっちゃいますから・・・。

スレイヤーズRETURN

 2作目から原作者:神坂一先生が脚本と言う形でスタッフに加わります。1作目は上記の通り、オリジナル色が強かったので、おそらく原点・・・即ち原作への回帰が図られたのではないかと思われます。さすが原作者自ら書き下ろした脚本だけあって、リナとナーガ、その他ゲストキャラ達の織り成す掛け合いギャグはまさに原作の「スレイヤーズすぺしゃる」そのもの。原作ファンも安心して笑って見られる作品に仕上がっています。
 しかし、作者自らが脚本集「スレイヤーズおりぢなる」で語っているように「『映像』ではなく『ことばによる説明』によるオチ」が多い。それらのシーンは「直前までかっこいい映像で盛り上げて、しょうもないオチに繋げて一気に脱力」という手法で表現されています。これはこれでうまく表現出来ていたとは思うのですが、確かにちょっと多用されすぎてて飽きるかな〜、とも思います。

スレイヤーズぐれえと

 RETURNでの反省点を踏まえると、3作品目が目指したものは「映像としてのインパクト」だったのではないかと思います。それはぴこぴこリナちゃんVSグラン・ゴッデスの巨大ゴーレム対決により、見事に成功を収めることになります。特にぴこぴこリナちゃんのインパクトは絶大でした。
 しかしながら、このインパクトの反面、ぐれえとでは後半のゴーレム対決が始まっちゃうと、リナとナーガ本人達はほとんど何もしてないんですよね。主人公本人達の活躍が今ひとつだったのが、ぐれえとの反省点でしょうか。良くも悪くもぴこぴこリナちゃんに全部持っていかれた、と。

スレイヤーズごぅじゃす

 4作目は「魔法大決戦」のキャッチコピーに相応しく、中盤以降(マレーネ戦〜ガイズノー戦)の戦闘シーンのかっこ良さがメインだと思っております。この年はTVシリーズもなかったので、その分少しシリアス目な戦闘を入れたんじゃないかな・・・と。もちろん前回の懸案であった、リナとナーガ本人達の大活躍も存分に堪能できます。
 ごぅじゃすで私が一番好きなシーンは、1発目の竜破斬が通じなかった後のリナのセリフ「効かないんじゃなくて防がれただけよ」って言うところ。この判断力と切り替えの早さがかっこよくて好きですね。その後の「嫌がらせ」作戦の発案も見事ながら、ナーガとのアイコンタクトによる連携も見逃せないです。やっぱいいコンビだよな〜と。
 ごぅじゃすの残念な点ははっきり言って「ギャグが寒い」こと。「お約束を逆手に取るお約束」もやりすぎると飽きるんだな・・・というのをまざまざと見せ付けられた形です。原作では現在でもそんなことはないのに、やはり映像が付いてしまうと強調されてしまうのかなあ。全体的にリナがオーバーリアクション気味です。
 それから、キャラクターデザインが原作から離れてしまったのは非常に残念でしたね。

スレイヤーズぷれみあむ

 冒頭で4部作、なんて書いてしまったけど、この作品を忘れたわけではないですよ。でもぷれみあむは、公開時期も少し空いているし、スタッフも違うんでちょっと特殊であることは確か。
 個人的に、ぷれみあむ最大の意義は「アニメ版スレイヤーズの復活」。OVA「えくせれんと」を含めても2年越しの復活です。アニメ展開はもうお終いなのかな、と思っていたところの復活の報がとても嬉しかったのを覚えています。そこに登場するのは原作本編キャラクター。これもファンの要望を受けた進化の形、なのかな。TVは本編、劇場はすぺしゃる、と言う従来の線引きを取り払い、ガウリイ達が銀幕デビューを果たしました。
 30分と言う短編ながら、ギャグありシリアスありガウリナあり、ゼロスの登場あり、とスレイヤーズ的な要素が詰まったお祭ムービーに仕上がっていると思います。ナーガがこっそり登場しているのも嬉しい。ちなみに彼女は劇場公開まで、その登場予定が伏せられていましたw。
 ぷれみあむは個人的には、色々不満な点も多いものの、ファンサービス企画としては及第点だと思っています。何より復活したこと自体が嬉しかったです。


 もしまた新たに劇場版の企画があるなら、本編キャラバージョンの長編作品が見てみたいですね。もちろんナーガも隠しキャラで登場していただく、と。

劇場版&OVA スレイヤーズ DVD‐BOX

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